ドクトル・バタフライによる採血に怯えつつ、私の病気の原因を探っている彼の行動には感謝しています。しかし、だからと言って注射器の拡大はダメです。
「血中に病気や細菌はいないか」
「怖いこと言わないでほしいです」
「そう言うがね。向こうの私と提携し、調べているだけでは足りないのだよ。かなり強力な強心薬を使って心肺蘇生を繰り返す事も出来ない」
「破裂しそう……」
そうっと自分の心臓のある胸に手を添える。彼の言い分は正しいのかも知れませんが、怖いものは怖いですから左之助さんに付き添ってほしい。
いえ、あまり無理強いはダメですよね。
「糸色君は小柄な上に細身だから採血も十分な量を得ることは出来ない。一回の採血でもう貧血になり掛けているのは君くらいだろうな」
「……私、ディスられてます?」
「ディス…?」
「ディスリスペクト。相手の事を貶す言葉を略して、ディスる。またはディスられると言います。多分、もう死語の扱いになっているんでしょうね」
「ふむ、ディスっているつもりはないよ。糸色君の事は信頼している、信用もしている。それこそ私の妻と同じように支えて欲しいと思っている程さ」
「浮気は悪い文明ですが?」
「知っているよ。だが、それだけ信頼しているということは理解してもらえたかな?」
「全然、分かりません。奥さまと同じと考えるのは悪い事です。私とドクトルは対等なお友達ですが、奥さまは貴方に寄り添える唯一の女性ですよ?」
「ふむ、語弊を感じるな。やはり私は少しずつ人間性を失っているのだろうか?しかし、私の蝶・素敵なファッションセンスに追い付けるのは糸色君くらいだ」
「今の時代にあのセンスは難しいですよ」
私は痩躯ですから似合いません。*1
「───どの試験管にも反応はないか。やはり直接心臓を取り替えてしまおうか」
「拒絶反応出ますよ、それだと」
「大丈夫……と言えないのが君の身体だな。脂肪が少なすぎて血液の量も少ない。肉を食べて太ってくれれば助かるのだがね」
「これでも頑張って増やしたんですよ?」
「出産に供えて頑張って食べていたときは心配したものだ。ひとえ君に関してもそうだ。あの子にサンピタラカムイの加護を根こそぎ吸われ、二度も恩恵を授かることになっていただろう?」
「あれは良いんです。ひとえに渡るのは最適だと分かっていますし、未来の出来事も良いことだらけです。まあ、変態さんに絡まれそうですが…」