私の寿命は伸びた様に見えるけど。
実際は命の蝋燭に無理やり蝋を足して固めているだけ。寿命は緩やかに磨り減って、いずれ完全に蝋燭の火は消えてしまうでしょうね。
「左之助さん、どう思いますか?」
「蝋燭の火が消えねえように囲う」
「真空だと火は消えますよ?」
「じゃあ、どうするんだよ」
「新しい蝋燭に火を移すんです。そうすれば私が死んでも私の生きていたという意味は消えず、しとりとひとえから、孫へと続いていくんです」
ふうと行灯の火を消して、左之助さんの隣に敷いた布団に潜ると手が触れ合う。ずっと伸ばしていたの?と首を傾げながら、左之助さんの手を握る。
大きな手。安心できる手を握って、ゆっくりと目を閉じると手を引く感覚に目を開けると、月明かりに照らされながら、此方を見つめる左之助さんが、ぼんやりと見えます。
フフ、なんだか恥ずかしいですね。
「景にオレの命を分けられたら良いんだがな」
「ダメです。禁忌は犯せませんし、そんなに都合の良いものはありませんよ」
ご都合主義なんていうモノは「物語」の主人公に付属する特権です。たまに持っておらず、死んでしまう人もいますが、世代交代になります。
「なら、もう一人ぐらいダメか?」
「だ、だから、身体が持たないんですっ」
「なら、これだけさせろ」
「んッ……あの?」
布団の中に引きずり込まれた事にビックリしたけれど。何かされたりすることはなくて、私の事を抱き締めているだけで怖いことはありません。
ただ、ちょっぴり恥ずかしい。
「左之助さん?」
「ちゃんと覚えるためだ」
「……はい」
ちゃんと覚えていて下さいね。
忘れたら、泣いちゃいますからね。
「景はひんやりしてて気持ちいいな」
「左之助さんは暖かいです」
そう言いながら私は彼の胸に身体を埋めるように近付いて、彼の心臓の音を聞き、眠りにつく。ずっと、こうしていたいです。
あなたの心臓の音を聞いていると、とても安心できる。いつもいつも左之助さんに寄り掛かってしまっているのに、どうしてあなたは許してくれるんですか?
ああ、本当に浅ましく求めてしまいそうです。
「んッ…!あの、手が」
慌てて左之助さんを見るも聴こえるのは寝息だけで、ぼんやりとした視界で顔も見えず、もう眠ってるのかなあ?と思いながら、お尻や腰に触れる手を我慢する。
起きてくれると助かるんですけど。
ぐっすりと眠っているのか。聴こえる寝息は一定で、左之助さんの手もゆっくりと動いているだけですから、私の勘違い……?