「おお、糸色殿。ちょうど良いところに」
玄関先に向かうと甲冑を身につけた男の人と一緒に立っている緋村剣心に名前を呼ばれ、チラリと甲冑の男の人に視線を向けてしまう。
やっぱり、記憶にありませんね。転生者というわけでも無さそうですし、出会った記憶もない男の人に首を傾げていると男の人が、いきなり傅いた。
「あ、あの?緋村さんも止めてくださいっ、なんだかイヤな予感がするんですけど」
「おろぉ……拙者に言われても」
こういうときこそ、どうにかしてもらえますか?と思った事を言いそうになるものの、止まってくれる気配のない甲冑の男の人に溜め息をこぼす。
「お久しゅう御座います。姫様」
「あ、あはは、三十路手前の女に姫様はキツいから止めて貰えると嬉しいですね」
私の後ろに立っている左之助さんの威圧感が増し、緋村剣心も逃げることに集中し始めている事に気付き、助けを求める相手を探します。
しかし、居るのは、しとりとひとえだけです。
最愛の愛娘達を巻き込むわけにはいきません。
こうなったら諦めて左之助さんに対応を任せてしまいましょうという結論に至り、すすすっと左之助さんの後ろに隠れるように移動します。
「先ず、てめぇは何者だ?」
「そういう貴様こそ何者だ」
「オレは景の旦那だ!」
「では、貴方がお館様!!」
「…………景、こいつおかしいぞ」
それはもうみんな知っています。
いえ、だから困っているんですけれど。
「で、お前は何なんだ」
「私は鎧に御座います。かつて戦骨様の身に付けていた戦装束に魂が宿り、永き
「付喪神ということですね」
「なんで景は直ぐに納得するんだ?」
「糸色殿でござるからな」
さっき緋村剣心が逃げようとしていたのを忘れるつもりはありませんからね?と視線を向けると、さっと視線を逸らしていますね。
そういうところですよ、もうっ。
……しかし、今さら目覚めたとは思えませんね。この甲冑はずっと戦骨の気配を追ってきたということになります。それこそ四百年もです。
「永い時をお疲れ様です」
思わず、兜を撫でてしまった。
「姫様、やはり貴女は對様なのですね」
「いえ、私は景ですね」
ついき。
糸色に合う言葉となると「對」になりますね。しかし、そうなると戦国時代にはもう糸色家はやはり戦骨と知り合っていたことになりますね。
お父様に家系図を探して貰いましょうか。
いえ、また面倒事に巻き込まれそうなのでやめておきましょう。なんだか、やっぱり過去に引きずり込まれるのは怖いですし。