「ごめん」
「いやです」
「な?」
「ふん」
「珍しいでござるなあ」
「接吻で囮にするのは悪いわよ」
緋村剣心と薫さんの二人も混ざり、四人で話し合いながら左之助さんのしてしまったことが広がる。左之助さんが自分で説明しましたからね。
しとりとひとえは私が怒っているのかと不安になっていますが、怒っているわけではないんです。愛の証とも言えるキスを道具にされたのが悲しいんです。
薫さんは分かってくれますけど。
本当に嫌だったんですよ?
「糸色殿を怒らせるとは、左之も随分とやらかしたでござるな」
そういう緋村剣心も薫さんの純情を弄んだ側の人間だって事を忘れてはいけませんよ。京都に行くとき、薫さんをなかせましたからね。
……こんなことを言ったら、また大変なことになりそうなので黙っていますけど。左之助さんはキスした事と、キスを使った事の違いを理解してほしいです。
男の人は、いつもそうです。
まあ、私は左之助さん以外と付き合った記憶は前世を含めてもありませんけど。かっこいいなー、と思う人はいましたけど。
好きになったのは、左之助さんだけですね。
「悪かった。許してほしい」
「……もう、あんな接吻はしませんか?」
「ああ、しない」
ジーッと彼の目を見つめる。
「……そう言って、七日前に賭場に行きました」
「それとこれとは別の話だ」
息抜きに行くのは良いんです。
隠すから悲しいんですよ?
「剣心もいた」
「剣心?」
「薫殿、左之の策略でござる」
「景さん、教えてくれる?」
「緋村さんも居ましたよ、褌でした」
「剣心!」
ドタドタと走り去る二人を見送って、私は左之助さんの手を握って彼の目を見つめる。
「左之助さん、私はウソを吐けませんし、誤魔化すことも苦手です。だから、ウソも誤魔化しもせずに素直に謝ってくれるのは嬉しいです」
「……ごめんな」
「はい、許します」
よしよしと左之助さんの頭を抱き締めながら、彼の頭を優しく撫でてあげます。でも、またウソを吐いたらまたドクトル・バタフライのところに行って、一時的に別居しちゃいますからね?
そう言おうとして、止める。
流石にそんなことを言うのは卑怯です。
「今度、一緒にお団子を食べに行きましょう」
「おう」
さて、しとりとひとえを迎えに行かないとですね。燕さんに預けてしまいましたから、あとで何かお礼を持参したほうが良いのかも知れません。
とは言え、です。
あまり高価なものを渡すと燕さんにも迷惑を掛けてしまいますから、なにか安心して渡せるものを考えないといけませんね。