緋村剣心達は初めて見るしとりの構えに僅かに興味を示し、左之助さんは「また、お前なのか」という視線を私に向けています。
桜花七式。
桜一刀流の築き上げた七つの型であり、しとりの霞の構えは一の太刀「五月雨」を放つために必要な姿勢。「五月雨」は予知の突き。
相手の面や胴、小手に対応する正眼と違い、柄を顔の横に添えた刺突技の構え。そして、切っ先を向けることによって踏み込みのタイミングも予測し、先回りして攻撃を放つことが出来る。
「
力強い踏み込みと、振るうは縦一文字の突き。
しかし、しとりの刺突技は更に速かった。剣路君の振り下ろす寸前の竹刀の鍔を突き抜き、竹刀その物を吹き飛ばして無手のまま腕を振り下ろした彼を胸で受け止める。
「ん!わたしの勝ち!」
「……あれは、牙突並みでござるな」
「お前、なんつうもんを教えてやがる」
「アレはしとりが覚えたものですから。それに剣術の使えない私があんな凄いものを教えられると、本気で思っているんですか?」
「しかし、怪しいでござるよ」
そう言うと緋村剣心は私の事を見つめ、ほかにも隠しているんだろうと言いたげな目をしていますけど。あれらはしとりが本を読み、自分で手に入れたものです。
そんな言い訳みたいなことを言ったところで緋村剣心は信じてくれませんし。
左之助さんもしとりが強くなっていることに気付いて、少しワクワクしている。自分の子供なんですから、酷いことしちゃダメですよ?
「糸色殿、あの技の解説を聞いても?」
「……分かりました。あれは桜一刀流の桜花七式、それぞれ七つの型に三つか二つ、派生技を加えた竹刀を用いて放つ撃剣術です。しとりが使ったのは一の太刀『五月雨』に該当する技になります」
「さみだれ」
「五月雨の術理を説明すると『置きの剣』になります。相手の攻撃を予測し、最適最短の突きによって喉や手、鳩尾を竹刀の剣先で打つ」
「景さん。これ腕力に頼らず、使えるわよね?」
「はい。桜一刀流は女人の剣術、腕力ではなく相手の勢いと力を利用する返し技の流儀です」
薫さんの指摘に答えると、緋村剣心の顔付きが変わる。流儀の違いは在れど先読みに秀でた飛天御剣流に通じる部分を理解したのでしょうが。
しかし、しとりは本当に凄いです。
剣術の指南書を渡しただけで、まさかアレ程完成度を高めているなんて想像もしていませんでした。本当に、しとりは剣が大好きなんですね。
……あまり強すぎると剣路君が拗ねちゃいますね。