「ひとえも姉ちゃんみたいに色々と知らない間に覚えてるのかぁ?」
「? とーさま、どうしたの?」
縁側に座った左之助さんはひとえをお膝の上に乗せて、何やら聞き出そうとしていますが、どちらかと言えばひとえは絵本派ですね。
ちなみに絵を描くと繋がるため、ドクトル・バタフライの描いてくれた絵本です。ただ、絵本に蝶々をこっそりと混ぜるのは止めて欲しいです。
「ひとえ、母ちゃんの秘密知ってるかあ?」
「ひみつー?」
「そうだ。隠し事とも言うな」
「んとね、えとね」
「おう」
「かーさま、がんばって動いてるよ?」
頑張って動いている。
ま、まあ、確かに歩くのも疲れますし。料理や洗濯物も最近は辛くて苦しかったですけど、少しずつ体力は戻って来ているんです……たぶん。
ですが、ひとえから見ても弱っているんですね。出来るだけ子供の前では普通に振る舞っているつもりだったけれど。子供の観察眼は本当に凄い。
……いえ、すごいではありませんね。
私が気を抜いていたから、子供達に不安を与えてしまったわけです……もっと健康的に振る舞わない、けど、健康的な自分がイメージ出来ませんね。
もう少しだけ隠し事が上手くならないとです。
「あそこに隠れてる母ちゃんに聞いてみるか?」
「あい!」
「……隠れてませんよ、ご飯の準備です」
団扇と七輪を見せると納得してくれますが、今日は藁焼きの牛肉を分厚く切ってステーキ風にする予定だったんですけど。七輪の藁焼きは風味も乗りますね。
「景はうまい飯を毎日作ってくれるな」
「それが取り柄……いえ、一番のお返しですから」
しとりとひとえに料理を教えているけど。
あと、どれぐらい教えることが出来るのかも分かりませんから記憶に残りやすい食事を出来るだけ作って、美味しく食べて欲しいです。
それに、いっぱい食べるのは良いことです。
しとりとひとえの成長の手助けを出来るのは母親として、とても嬉しい事ですから、これからもいっぱい作ってあげたいんです。
「ん!母様、焦げてる!」
「これは炙りですよぉ?」
「ん、良い匂い」
ドン達の散歩を終えたしとりの帰宅にひとえが嬉しそうに抱き付こうとしたものの、七輪があるので左之助さんが抱き締めて止めてくれました。
良かった。
私だったら受け止めきれず、そのまま転んでいたかも知れませんし。下手したらひとえに大怪我を負わせていたかも知れませんでした。
「ひーちゃん、火のそばでは暴れない!」
「むう、ごめんなさい」
「フフ、謝れて偉いですね」
そう言って褒めてあげる。
お料理の途中ですから、よしよしは出来ません。