アメリカ行きの蒸気船に繋がる掛け橋の近くで私と左之助さんは皆とのお別れの言葉を交わす。───けど、いつか日本に帰ってくるつもりだ。
具体的には五年後くらいしたらだけどね。
「寂しくなるわね」
「景さん、身体に気をつけてね」
「はい。高荷さんも神谷さんも気をつけて」
二人は緋村剣心を巡っていたライバルであり、私の掛け替えの無い親友だ。これからも安心できる幸せな生活を送ってほしい。
「相楽、呉々も目を離すなよ?」
「誰に言ってんだ。斎藤」
「まあまあ、二人とも」
「「お前は早く働け」」
「おろぉ……」
向こうも向こうで楽しそうに話しているのかな?と考えながら汽笛の音が聴こえる。そろそろ出港することになってしまう。二度目の人生は波乱万丈で、不安と恐怖、絶望に溢れていたけど。
みんなのおかげで安心して笑える様になった。
「左之助、絶対守れよ!」
「泣かしたら怒りの怪鳥蹴りだかんね!」
「バーカ、当たり前だっての。なあ?」
「はい、信じてます」
明神君と巻町さんの言葉を左之助さんは握り拳を掲げ、私に同意を求めてくる。うん、ずっと、これからも守って愛して貰える。
ゆっくりと掛け橋を昇っている途中、後ろに振り返れば皆が笑顔を向けてくれる。始まりは二年前で、左之助さんと出会ってから激動のように私は物語の一員になれて、緋村剣心、神谷さん、明神君、高荷さん、いつでも会える友人にも恵まれた。
京都まで左之助さんを追い掛けて、御庭番衆の人達とも交友関係を結び、巻町さんとも友達になって、最初は敵だったのに本条さんも友達になってくれた。
今でも生きることは怖い。
でも、笑顔になれた。
僅か半年の間に楽しいことも怖いことも悲しいことも沢山起こったけれど。誰よりも何よりもきっと、この世界に生まれ変わった転生者の中で私は大好きな人と生きていける事が幸せ者なんだろう。
それでもこの世界に生まれ変わることを選んだ転生者がいるのなら教えてあげたい。不幸も幸福も訪れるのが、人生なんだ。
それでも生きることに挫けそうになったら前世の想い出を思い出して、また歩いていけるように、私の憧れていた想い出を皆に分けてあげる。
「景、怖かったらいつでも言えよ?」
「フフ、大丈夫です。左之助さんが居ますから!」
そう言って私は左之助さんに寄り添う。どれだけ怖くても生きていけると怖がりで臆病者な私が安心できたように、どんな世界に行っても希望は紡げる。
だから、私は希望の漫画を描く。
みんなが勇気を思い出して、歩いて、自分の思い描いた未来に進んでいけるように。
────某剣客浪漫世界で私は物書きをする。
このお話で原作本編「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」は終わりになります。
次は「GUN BLAZE WEST」になるのか「エンバーミング」になるのか、それとも「武装錬金」の時代に物語は変わり、異なる時代と世界を糸色景と相楽左之助は歩むことになり、その子孫が新しく歩み始めるのか。
-追記-
第一部は、これにて終幕────。
続きは、第二部へと向かいます。