「抜剣!」
その掛け声と共に円陣を組む十本刀。*1
左之助さんの「また何かしたのか?」という視線を向けてきますが、そういうわけではありませんよ。私は、悪いことはしていないのです。
「かーさま、ひーもほしいぃ」
「あらあら、どうしましょうか」
ゴロゴロと転がっている左之助さんの背中に張り付いていたひとえのお願いに少し困ってしまう。しとりは妖怪や魔の物を惹き付けやすい体質ですが、ひとえは戦隊に関わる何かしらを惹き付けてしまいます。
それに、ひとえには守り刀の懐剣を渡しています。
刀々斎の作った名刀です。
人を斬る力はありませんが、強力な妖怪の牙を素材に使っているらしく、この時代で守り刀の結界を越える事が出来る妖怪は早々にいない。
「ひとえには、そうですねえ」
何かあったでしょうか?と袖の中を探す。
ワクワクとするひとえと、私の袖の中を覗き込み、沢山の棚の見える光景に目尻を擦る左之助さん、まだ名前も聞けていない妖刀を抜こうと頑張っているしとりにも視線を向けていきます。
「杖なんて、どうです?」
「むう」
ひょいっ、と杖を取り出して見せる。
でも、少し不満そうです。
「風よ、起これ」
トントンと杖の下の方を握り、くるくると回すとクエスチョンマークのように曲がった先を動かすと庭先に小さな竜巻が生まれ、グルグルと静止している。
「……そんなことするから狙われるんじゃねえか?」
「言い得て妙ですね」
左之助さんの呟きに同意しつつ、不満そうだったひとえも目をキラキラとさせています。私の『特典』が変質した能力と、サンピタラカムイ様の加護を持つ、巫女としての適性の高いひとえにピッタリのひみつ道具です。
ひみつ道具「神様ステッキ」。
本来は「神さまぼう」という天使の光輪状のひみつ道具を装着しないと使えない道具なのですが、本物の神様の加護を持つ私とひとえは普通に使えました。
「かぜー!かみなりー!」
「ん!ん!ん!」
ビュオォーーッ!!
ゴロゴロォーーッ!!
────と、ひとえの動きと言葉、イメージによって生じる自然現象の数々にしとりは単身で向き合い、雷を回避するだけでなく斬っていく。
風は逆回転し、斬り伏せる。
しとりの強さは左之助さん譲りですねえ。
「かーさま、ピカピカゴロゴロ!」
「フフ、楽しそうで何よりです」
「ん!ひーちゃん、雪だせる?」
「えとね、ゆきー!」
バッ!と神様ステッキを突き上げた瞬間、夏期下旬とは思えない肌寒さと広範囲に及ぶ豪雪の勢いに頬を引き釣らせ、雪に埋もれていくしとりが、草履を脱ぎ捨てながら、縁側に飛び込んできました。
「雨戸、閉めるか」
「そうですねえ」
いそいそと準備します。