最近、ひとえは男の子と遊んでいます。
近所の算術や読み書きを教える高槻朱鷺と武藤小夜の寺子屋に通っている男の子でしょうか。ひとえは普通ですが、男の子の方はチラチラとひとえを見ています。
「景、流石にひとえはまだ早いよな」
「左之助さんはいつもそれですねえ」
ひょっこりと塀の門から顔を出し、お花を貰って笑っているひとえを見守っていた左之助さんの呟きに苦笑を浮かべつつ、私は微笑ましく思います。
ひとえはもう八歳(数え年の七歳)ですよ?
いつまでも家の中に囲い、自由を縛るなんて出来ないんです。しとりだって神谷道場で剣道を習い始め、色々な人と触れ合い、成長していますし。
まあ、緋村剣心と同じく剣路君も何気に好きな異性に向ける感情の重さは度し難いものになっていますが、追々しとりがなんとかするはずです。
「(左之助さんだって上京したばかりの私を囲っていたじゃないですか。なんて言えませんね)左之助さん、そろそろ野次馬はもうやめましょう」
「ダメだ。景、ひとえは無邪気なんだ」
「そうですね。優しく可愛い女の子です」
「そんなひとえが男なんかと一緒にいたら大変なことになるのは分かりきってるだろ」
「子供を何だと思ってるんですか?」
恋愛経験なんて皆無だった私に無いこと無いこと詰め込もうとしていた事実は消えませんからね。薫さんに聞いたらドン引きされたんですからっ。
「ムッ。動いたぞ」
「あの方向は大通りですね」
「母様、父様、何してるの?」
剣路君と一緒に胴当てを身につけたしとりが雪駄を履き、私達の真横に立っていました。どうやら二人の接近に気付かないほど左之助さんは集中していたようですね。
「しとり、アイツ誰か分かるか?」
「ん、暴れん坊の
「暴れん坊か、なら父ちゃんが出ても問題ねえな」
にんまりと笑った左之助さんはズカズカと歩き出して、ひとえを抱き上げると、フンスと胸を張って自信満々にふんぞり返っています。
大人気ないですよ、左之助さん。
そう思いながら、いさじ君の方を見た瞬間、瞳孔を通して少し未来の出来事───というより、これから始まる「物語」に繋がる出来事を知った。
どうやら彼は『めしあげ』の「物語」に生まれた転生者のようです。
それもドクトル・バタフライもまだ気付いていない、いえ、あの感じだといさじ君が突っぱねてしまったのかも知れませんね。
「とーさま、けんかあ?」
「んなわけないだろぉ?ひとえを取られるのが嫌で父ちゃんは出てきただけだ」
左之助さん、子供を束縛するのはダメですよ?