「やあ、久しぶりだね。景」
「お、お父様?」
家の前の落ち葉の掃き掃除をしているとき、お母様を連れ立って現れたお父様の姿に困惑しながらも「どうして東京にいるんですか?」と訊ねる。
「私の行き先は常に愛ある場所さ」
「相変わらず、詩的な言葉ですね」
「そうだろう?今日は愛娘と愛孫を訪ねてきた理由は別件とも言えることだが、そろそろ遺産相続しておこうと思ってね!まあ、私はお頂さんと向こう百年ほど長々と生きる気だけど!HAHAHAHAHAHA!!!」
遺産相続?とまだまだ元気なお父様とお母様とは無縁そうな言葉に戸惑いつつ、二人の事を玄関に案内し、玄関の段差を登り、雪駄を揃える。
私の事を見つめるお母様の視線は悲しさを増し、私に手を伸ばして、直ぐに手を引き込めてしまう。私もお母様と話しておきたいことがあります。
「私は、愛孫達に会ってくるよ。お頂さんは景とゆっくり話してあげなさい。愛孫ーーーっ!ふたりの爺様がやって来ましたぞー!!!」
喧騒と駆け出すお父様を見送りつつ、私は居間に座っているお母様にお茶とお茶菓子を用意し、ゆっくりとお母様の目の前に正座し、姿勢を正す。
「顔色が、優れないわね」
「……ですが、愛する家族と過ごして最期を迎えることは出来そうです。お母様、私が居なくなったら、しとりとひとえをお願い出来ますか?」
「────お断りします。あの子達の母親は貴女よ、産んだのなら最期まで見届けなさい」
なんですか、その言い方……。
私だって、出来るならそうしたい。
なんで、そんなことを言うですかッ……!
「ッ、それが出来ないんですよ!!…あっ、ちが、ごめん、なさい……」
「謝らないでちょうだい。私は貴女を健康に産んであげることが出来なかったと悔いる事は止めました。西洋医学だろうと心霊医学だろうと何がなんでも何を使ってでも貴女の事を諦めません」
「………そんなこと言って、諦めているじゃないですか。私の顔を見たときにお父様と違って、お母様は泣きそうになるほどショックを受けていましたよね」
「子供が死ぬと分かっていて泣かない親がいると思っているの?景、貴女は自分の事を下に、いえ、自分の事を雑に扱いすぎているわ」
そう言うとお母様の手が私の頬を撫でる。
「ちゃんと生きなさい。生きる方法が見つからないのなら、私の心臓を貴女にあげるわ。だから、諦めた顔を子供に見せてはいけないわよ」
「………………はい」
「話は変わるけれど。裁縫をしているそうですね、私にも見せなさい」
それは、ちょっと……。