しとりとひとえと遊ぶお父様と張り合う左之助さんに苦笑を浮かべつつ、お母様と一緒に料理を作り、久しぶりにお母様とお風呂に入ることになりました。
「相変わらず細いし薄いわね」
「…お母様が太いんですよ」
「誰が関取ですってぇ?」
「いふぁいふぁい!」
頬っぺたを引っ張られ、お母様の手をペチペチと叩いて放して貰う。しとりとひとえは私達のやり取りを見て、クスクスと可愛く笑っています。
「全く孫娘に悪いばあ様だって思われたらどうするつもりよ。ただでさえ世さんがバカみたいに甘やかしているのに、ねえ?」
「ひー、ばあさま好き!」
「ひとえは可愛いわねえぇ」
「ん!母様も好きだよ!」
「フフ、ありがとうございます」
四人で大きな浴槽に浸かって、そう話す。お母様なりに私の事を心配していることも私にわざと嫌な事を言って生きる気力を与えようとしてくれていることは分かりますし、理解もしています。
それでも怖くて恐ろしいんです。
左之助さんやお友達にも話していない。もうすぐ死ぬという怖さに泣いて、蹲り、動かなくなることだって私は耐えているんです。
「ばあ様は母様すき?」
「……えぇ、大好きよ。この世でたった一人だけの娘だもの。しとりもひとえもお母さんを大切にしないとばあ様が許さないわよぉ?」
「ん!わかった!」
「ひーもがんばる」
トタトタと脱衣場に向かっていく二人を追いかけ、しっかりと二人の身体や髪の毛の水気をタオルで拭き取ってあげ、二人の頭に水気を吸うタオルをターバンのように巻いてあげる。
私は癖毛ですから長くは出来ません。
「……良いタオルを使ってるわね」
「それは貰い物ですよ」
流石に絹製品をタオルに使おうとは思いません。しとりやひとえの着物を作るときに使いますし、他のものに使うのは私の趣味や小物を作るときですね。
「景は幸せ?」
「幸せです」
幸せにしてもらっています。
長野の実家に引きこもっていたら、きっと私はこうして子供にも好きな人にも出会えなかった。あのとき、送り出してくれて、ありがとうございます。
お母様がお父様を説得してくれたおかげで、私はこうして家族に出会えたんです。
「……ところで、小耳に挟んだのだけれど。左之助君、緊縛好きというのは本当なのかしら?」
えうっ、と、ですね。
「ほ、ほんとうです」
「そう。なら、これを渡しておくわ」
そう言うとお母様は縄縛術と書かれた本を差し出してきました。こ、こんなのバレたら左之助さんに何されるかも分からないじゃないですっ。