キセルっぽいものを揺らすお父様と左之助さんを見掛け、口許を袖で隠すように押さえる。その様子に気付いてくれたお母様の薙刀がお父様の横顔に当たります。
「うぉふぉいっ!?」
「世さん、景は肺を患っているのよ?」
「キセルじゃない!キセルじゃない!」
そう言いながらお父様が差し出したのはキセルの形をした筆です。少し古びた石筆と矢立です。私の持っているものとは違いますね。
「ん!母様も似たの持ってる!」
「これですね」
袖から出すとお母様は「今、何処から出したの?」と私の袖の中に手を差し込み、ゆっくりと腕を引き抜くとひみつ道具の「ガリバートンネル」が現れ、お母様もお父様も困惑していました。
「奇術師になるのかい?」
「私の娘ながら変なことになったわね」
そんなこと言わないで下さい。私の服は大体が一つの四次元空間に繋がっているだけで、トランクケースも四次元トランクになっているだけです。
普段はスモールライトを当てて、小型化しているんですけど。ガリバートンネルだけはダメだったようで、そのまま入れているんです。
「ねーさま!ねーさま!」
「ん!ひーちゃん、ちっちゃい!」
いつの間にかガリバートンネルを通ったひとえを手のひらに乗せたしとりが居間の真ん中に移動し、長方形の机の上を走るひとえを見ています。
「果物を置いてあげましょう」
果肉だけを取って蜜柑や林檎を小さく切ったものをお皿の上に置き、ひとえの目の前に置くとお皿の上に飛び乗るところを眺める。
とても可愛いです、ソーキュートです。
「お父様も通りますか?」
「良いのかい!?」
我先にと走り出し、ガリバートンネルを駆け抜けたお父様は目の前でアクビをしていたドンの口の中に入り、ゴクンと呑み込まれた。
「世さん!?」
「ん!ペッして!ペッして!」
「お、おお、呑み込んだのか今?」
「…………お父様、おふざけはダメですよ」
私の言葉にドンの首元から出てきたお父様は悪戯に失敗した子供のような顔をしていました。私の位置からだと丸見えになっていますよ。
「まあ、そんなことより臭いから洗面器かりるわね」
「HAHAHAはぶぶぶぶぶっ」
バシャバシャと揉み込まれ、洗われるお父様の姿に何とも言えない気持ちになりながらも、可愛らしく果物を食べているひとえを見ることにしました。
やっぱり我が子の方がかわいいです。
しかし、危ないので止めるべきですね。
「お母様、流石に死んじゃいます」
「まだ行けるわ」
いえ、流石に危ないのですよ。
お父様が取れちゃいます。