チラチラと私の事を見る外国人のお客さんに首を傾げつつ、本を手に取ると「Amazing」という言葉が聞こえてきますが、イントネーションの違和感があります。
少し訛った感じの言葉です。
「(ドイツ人?)」
黒の騎士団の人間、あるいはドイツ医学の関係者がたまたま立ち寄ってしまっただけと考えるべきですね。ですが、先程から私の事を見つめるのは何故でしょう?
「すまない」
「え?えうっ……?」
口の中に万年筆を差し込まれたかと思えば真剣な顔付きで喉の奥を見られ、目尻の下、瞳孔、脈拍など診察されていく自分に困惑してしまう。
私は何故見知らぬ人に診察を?
「吸って」
「えと、は、はい…すう…」
「ゆっくりと吐いて」
訳も分からずに人も見ているのに背中に耳を当てられ、呼吸器官の具合の試され、五回、六回、呼吸を繰り返して診察は終わる。
ガリガリと手帳に何かを書いたかと思えば住所でした。おそらく彼の滞在する病院か診療所の場所なんでしょうが、書き方はドイツ語ですね。
「景、今のは貴女の主治医かしら?」
「いえ、押し売り医者だと思います。私の主治医は女医ですし、今みたいに乱雑な診察はしませんから、医学を学んだだれかです」
そう言って私はお父様に店番をお願いし、口の中をアルコールで濯ぎ、しっかりと歯磨きも行い、スンスンと口臭を確かめます。
臭くはないですし、何もありませんね。
毒を流し込まれても仕方ないと思っていたんですけど。どうやら怪我はしていないですし、毒も薬も流し込まれていないようです。
「ん!母様、剣!」
「どこにあったものですか?」
「お店の外に並んでた!」
お父様か左之助さんの仕業ですね。
……しかし、中々の業物です。
妖刀や魔剣という雰囲気は感じず、鋳造の剣より強度や刀身の練りもあります。分類は直剣。しかし、長さは短剣と長く、直剣より短い。
いわゆる中途半端な間合いの剣です。
閉所や狭所など戦闘に不向きな場所を想定し、作り上げた武器に感心しながら鞘に納めて、しとりに返すと嬉しそうに部屋に持っていきます。
「いいのかしら」
「不法投棄ですし。我が家は商家ですから探しに来たら本人確認してお返ししますよ」
流石に危ないですからね。
それにしても刀と違って、無駄な装飾品の多すぎる剣に正直に言えば不満です。こんなに多く取り付けたら逆に剣を抜けなくなってしまいます。
そうなると、とても大変そうです。
「しとりは腕白に育ったわね」
「それもまた良いことです」
押し付けるのはダメです。