左之助さん達のおかげで何事もなく安全に家に帰ることは出来たものの、お父様はしとりとひとえの遊びに巻き込まれ、精魂尽き果てています。
「世さん、またなのね」
「くるぴい」
「ん!じい様よわい!」
「じーさま、よわい!」
廊下に倒れたお父様の背中をペチペチと叩いて告げる子供の無慈悲な言葉にお父様は悲しそうにしながらも子供と遊べて満足そうにも見えます。
それは、良いのですけれど。
「しとり、ひとえ、危ないですよ?」
手洗いとうがいを済ませて、お父様の背中やお尻を叩いていた娘達の手を引いて、今に戻ると少し読み掛けの本やお茶の残った湯呑みがあった。
お片付けしないとですね。
「これは、どうしましょうか」
「ん、私の本だからまだだめ」
「ひーもまだのんでないよ?」
「あらあら」
どうやらお片付けせずに遊んでいたのは姉妹共々だったようです。しかし、そういうこともまたありますね。えぇ、可愛いので許します。
しかし、可愛くておこれません。
「二人とも一緒にお片付けしましょうか?」
「ん!」
「あい!」
お母様に腰を痛めたお父様の事を頼み、左之助さんも一緒にお父様を客間に運んで貰います。お母様だけではお父様を運ぶことは出来ませんからね。
それにしても何をしていたら、こんなに本が山積みになるのかと首を傾げつつ、しとりがお小遣いで買ったであろう本は絵草紙ではなく海外の学術書です。
読めるの?と聞こうと考えるも、しとりもひとえも海外に何ヵ月も滞在していたから、覚える機会はいくらでもあると理解します。
でも、子供でも哲学書を読むんですね。
「かーさま、ひーはなするの?」
「ひとえは一緒に机の上のお掃除です」
「あい!」
机の上を濡らした手拭いで拭いていき、食べ滓を包装紙に集めて丸め、ゴミ箱に入れます。ドクトル・バタフライに貰ったゴミ箱なので怪しさはある。
───ですが、ゴミは溢れません。
とても便利なプレゼントです。
「ん!わたしも本棚ほしい!」
「では、左之助さんに作って貰いましょうか」
「ねーさまつくるのぉ?」
「ん?!……ん、わたしが作る!」
グッと小さな手を握って、ひとえの期待に応えるために頷くしとりですが、工作の経験なんてありません。これは、ピンチなのでは?
そんなことを思ったりしていると、しとりの少し困った表情に思わず、クスクスと笑ってしまいます。いつもの天真爛漫さは残りつつ、ちょっとだけへにゃっとなった眉がとても可愛いですよ。
「母様、できる?」
「左之助さんに言って、一緒に習いましょうか」
「ん!」