諏訪湖に来ました。
明神君達にも来て貰う事になりましたが、危険な行為に及ぶ事を想定し、私はひとえの持つ懐剣の結界の中に収まり、しとりは剣路君の傍にいます。
お父様とお母様は夫婦円満の御守りを買って、イチャイチャしています。私と左之助さんも買おうかと思っていると左之助さんが何かを差し出してきた。
夫婦円満でしょうか?
恋愛成就だったりしますか?
「……無病息災、と、安産祈願…あの、もう体力的に苦しいと言いますか、えと、身体が根本的に持たないといいますか、その…ですね、えと、ですね」
「別んとこの景は四人産んだんだろう?」
ニコニコと普段の左之助さんからは想像も出来ない爽やかすぎる笑顔にビクリと肩を強張らせ、ひとえに結界を張って貰いますけど。
左之助さんは人間なので効きませんでした。
「むう!」
「こ、こんな人前で噛まないで下さいっ」
チョーカーを外され、首筋を噛まれる姿をお母様とお父様にも見られ、薫さんや明神君にも呆れられているのが見えないのですかっ。
「左之助君、ちょっと良いかしら?」
「なんだ?お袋さん」
「貴方、分かっててやってるわね?」
「当たり前だろ。景は鈍いから分かってないがな」
? いったい、なにを言っているのでしょう。
首を噛むことに意味が?と首を傾げながらもチョーカーを巻き直し、ゆっくりと留め金を重ねます。しかし、噛まれすぎて穴が空きそうです。
「景は好意に鈍いのよね…」
「好意に鈍くはないですよ?」
「愛憎混ざったやつよ」
憎まれる覚えはありませんが、そういうことがあるのならそうなのでしょうね。─────とは言えです。諏訪湖の地下に続く道を探す方が優先事項です。
「地下に続く場所は分かるのか?」
「おおよその地形と立地さえ分かれば直ぐに導き出せますよ。左之助さんも覚えますか?地形学」
「いや、止めとく。頭が痛そうだ」
難しくないのに、残念です。
「ところで、あそこで聞き耳を立てている風鈴売りは御庭番衆なのか。どうにも私は話した覚えがないのだが、お頂さんはどう思う?」
「普通に考えて敵よ」
お母様の言葉を皮切りに境内にいた参拝客の過半数は着物を払いのけ、忍び装束を纏った古典に登場する様な忍者達が各々の武器を構える。
「ざっと数えて三十人か、少ないな」
「左之、油断大敵でござるよ」
「あたぼうよ!」
私と娘達、剣路君、お母様、薫さんを中心に置いて陣形を組むみんなに「ありがとうございます」と伝えつつ、いつの間にか槍を構えるお父様に目を見開く。
何故、そこにいるのですか!?