左之助さん達に混ざって暴れるお父様の姿にオロオロとしながらも芸能者特有の派手な見映えを魅せる動きによって、普通の参拝客は公演だと思ってくれています。
ほうっと安堵する私達に飛び掛かってきた忍者はひとえのビンタで地面に倒れ伏し、そのあまりにも強烈な快音に戦っていた人達の動きは止まってしまう。
「ん!ひーちゃん、めっ!」
「じゃまだったもん」
そう言うとひとえは私の手を握り、少しだけ不満そうにしています。しとり達の習っている剣道と違って、目の前にいる忍者達の武器は本物です。
もしも怪我をしたら、とても大変です。
私の言葉に小首を傾げつつ、ひとえはまた私の傍に寄ってくれます。しとりも怪我していないかを確かめてくれ、本当に感謝しかありません。
けれど。一度止まったはずの攻撃は止まず、みんなは戦えることを楽しんでいるようにも見えます。今まで隠れるだけだった彼らが、ようやく戦えるときが来たのだと思えば、当然の結果とも言えます。
ただ、ここまで長引くのは予想外です。
最後の死に様を飾ろうとしている。そういう風に捉えるしかあり得ません。命を粗末に扱うのは、すごく嫌いなことです。
「左之助!そっちに行ったぞ!」
「ちゃんと倒しやがれ!」
「帷子で防がれるんだよ!」
悪態を吐く明神君の言う通り、忍者は帷子を着込み、防御に専念せず、倒すことに意識を集中することが出来るわけです。
肩口を狙った明神君の面打ちが決まり、次第に忍者も何人か意識を失い、地面に倒れる。
「お主で最後でござるよ」
「フ、まだ終わらん!」
ボフン!と煙玉を地面に叩きつけ、颯爽と逃げていく忍者を追うわけにもいかず、コマ送りみたいに戦っていたお父様は満足げに笑うもお母様に怒られています。
「景、大丈夫か?」
「はい。しとりとひとえも無事です」
「ひとえはよくやったな。母ちゃんと姉ちゃんを守れて偉いぞ。しとりもひとえを引き留めて、ちゃんと守ってくれたな。ありがとう」
「ん!」
「あい!」
左之助さんに褒められて嬉しそうに笑いながらしとりとひとえは彼に抱きつき、抱っこして貰っています。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ羨ましいです。
「景さん、少しキナ臭いわね」
「えぇ、相手は外国の人だったのに、いきはり忍者が出てくるのは怪しいです。共同戦線か、忍者を雇っていると考えるべきですね」
悩ましいです。
真田忍群の事を伝えたいですが、その事を知っているとバレたらまた怪しまれます。というより、なぜ私はあんなにも怪しまれるのでしょうね。