「蹄の跡がある」
「おそらく荷馬車か何かを引く新しい道を作っているのでござろう。異国の地に封じる程の霊薬、糸色殿は何と心得る?」
「……何と心得ると言われましても、不老不死になったことはありませんし。なろうとも思いません。ですが、思い付くのは不死の軍団でしょうか」
そう伝えると空気は一変した。
おちゃらけていたお父様さえも真剣な
「オヤジさん、アンタは景の父親だ。何かしら使えるんじゃねえのか?」
「何かしらと言われても私は古式の陰陽術や呪禁みたいなものばかりだね。まあ、薙刀や槍を用いて呪法を使えるには使えるさ」
「やっぱり糸色は妖しいでござるな」
まだ、怪しんでいるんですか?
いい加減に無害な人間だと認めてほしいんですけれど。緋村剣心の中に構築された糸色家に対する怪しさはどうにも拭えないようです。
「剣心、景さんは怪しくても景さんのお父さんはそんなに怪しくないわよ?」
薫さん、どういう意味ですか?と思わず、薫さんのほうに視線を向けると私の視線に気付いた彼女はササッと顔を緋村剣心の後ろに隠しました。
まさか親友にまで、そんな風に思われていたなんて、ものすごくショックです。悲しさのあまり倒れてないてしまいそうになります。
「左之助さん、怪しいですか?」
「いやらしいとは思う」
「え?」
「なんでもない」
いえ、普通に聞こえていましたよ。
けど、こんな細くて薄い身体に欲情するなんて、やっぱり左之助さんだけだと思います。胸やお尻にギリギリ、かろうじて、ほんのちょっとだけある程度です。
ぐすんっ。
「ん!変な臭いする」
「腐った卵みたいね」
「硫黄の臭いですね。吸いすぎると危険ですから、此方の防毒面を被って下さい。左之助さんも私を下ろして身に付けてください」
「景が着けてくれ」
「……では、失礼しますね」
ゆっくりと左之助さんの顔に
「う~ん、我が娘ながら愛欲に溢れている」
「世さんもあんなのよ」
「私の愛はお頂さん一筋さ!」
そんな言葉が聴こえ、顔も耳も首まで恥ずかしさで赤く染まっているように思えてしまい、左之助さんの肩口に顔を埋めてしまいます。
そういうことは、まだ知りたくなかったです。