ゆっくりと進んでいく道中、あからさまに踏み歩いている横道に視線を向けます。人は潜める程度の小さな横穴ですが、やはり危険な気がします。
「景、何かいるのか?」
「いえ、少し暗くて奥が見えなかったので…」
「そうか?」
「はい。そうです」
くうくうと眠るしとりとひとえを抱っこする左之助さんの『悪一文字』の法被の裾を摘まみ、此方に向かって視線を向ける蝙蝠や蛇を見返す。
忍者ならぬ忍獣ですね。
ゆっくりとしとりの影から出てきたドンの勇ましい雄叫びは反響し、ビリビリと大気を震わせ、忍獣達を退けてしまった。
流石は最強生物のクズリだと感心しつつ、左之助さんのほうを見上げるとしとりとひとえに抱き付かれ、前が見えなくなっていました。
「左之助さん、見えますか?」
「……ギリギリ、足元は見える」
「フフ、じゃあ、私が先導してあげますね」
「助かる」
いつものように手を握ることはありません。
が、左之助さんと一緒に石段を上がり、緋村剣心達の事を追いかけていると古ドイツ語の文字が書かれた石碑がチラホラと見え始める。
要約すると「この先、向かうべからず」。
「……くさい」
「しとりは起きたんですね。おはようございます」
「ん、お鼻ムズムズする」
「マスクを着けますか?」
「ん」
しとりを受け取って抱き上げる。
「フフ、大きくなりましたね」
カクカクと足腰が震えて、しとりを抱き締める手が子供の体重を支えることが出来ず、プルプルと震えてしまい、左之助さんに笑われてしまう。
お、落とすわけにはいきませんっ。
「くあぁ……へふ」
「ひうぅっ…!?」
耳元に吐息が吹き掛けられ、ビクリと身体が跳ねる。耳元というより首全般が弱いから、そういうことはしないでほしいです。
いえ、子供に言うことではありませんね。
「……しとり、起きてますね?」
「ん!バレた!」
パチリと目を開けたしとりは残念そうに私の腕の中を飛び下りて、緋村剣心に抱っこして貰っている剣路君の寝顔を見に行ってしまいました。
フフ、やっぱり大好きなんですね。
「ひとえも起きましたか?」
「いや、まだ寝てる」
「お眠さんですねえ」
ひとえの頭を撫でるために背伸びし、よしよしと足が攣る限界まで爪先で立ってひとえの頭を優しく撫でてあげます。
「ふんっ、ふ、くぅ…!」
「がんばれがんばれ」
「も、もう少し下ろしてくださいっ」
「むり退けッ!!」
私とひとえを守るように法被を振りかぶった左之助さんの足元に十字型の手裏剣がカランカランと落ち、ようやく忍者達に囲まれていることに気付きました。