「ヌエェアッ!!」
「うおらあっ!!」
騎乗槍と大鉾の衝突で生じた火花が石油に引火し、聖なる霊薬が燃えていく。かれらの求めていたものは、このまま燃えてなくなってしまう。
しかし、馬の速さに翻弄され、左之助さんの肩や脇腹や胸に次々と傷が刻まれ、ボタボタと血が地面に滴り落ちている。
「ハハハ!馬上の私を相手に足を止めて、そのようなデカブツを振るって当たると貴様は本気で思っているのか!」
「……ペッ。ガタガタうるせえな」
ですが、メルダース中尉の言う通りです。
左之助さんは攻撃は得意でも防御に関しては、本当に苦手です。どうにか防御に意識を割かずに済む方法があれば良いんですけれど。
「ん!母様、ばくちゃんは?」
「ばく?……爆心の鎧ですか?」
「父様なら着れるよ?」
しとりの言葉に迷う瞬間もなく私は影から頭だけ出している個魔の方に視線を向け、しとりとひとえを支えて貰います。
ゆっくりと結界の外に出ると、喉が焼けるように熱い炎熱の中に踏み込み、死ぬかも知れない恐怖に呼吸が荒れながらも袖の中に手を差し込み、深呼吸をする。
「来て下さい、爆心の鎧…!」
ショドウフォンで素早く『鎧』の文字を描き、左之助さんに向かって放つと左之助さんの身体が真っ赤に燃え上がり、日本甲冑が纏わり付き、頬当てが顔を覆う。
「熱いが、問題ない!」
そう言うと左之助さんの振るう蛮竜が炎熱を吸い込み、周囲の炎さえも飲み干し、真っ赤に燃える湖面に強烈な爆熱が弾ける。
「…………ちと、やり過ぎたか?」
蛮竜を担ぎながら、そういった左之助さんの見据える先には巨大な穴が広がり、あと数センチほどズレていればメルダース中尉も馬も消し飛んでいました。
「フハ、ハハハ!!まさかその様な武器があるとは思いもしなかった!だが、その燃えていた鎧も今は鎮火している!」
だから、まだ負けていないと叫ぶメルダース中尉と違って熱に怯える馬を降りた彼は騎乗槍を捨て、ゆっくりと腰に佩いていた剣を引き抜く。
爆心の鎧と、生きた魔鎧。
最強の霊鉾に対して、普通の剣はダメです。
「……母様、あの剣ほしい」
キラキラと輝く瞳に、サアと血の気が引いた。
しとりが欲しがるということは、彼の持っている剣は間違いなく魔剣や妖剣の類いということです。左之助さんに伝えようにもアレだけ接戦しているところに呼び掛けるのは却って彼を危険にするだけ────。
大丈夫、左之助さんなら大丈夫です。
「私のこの鳳凰天舞と斬り結べるとは、良き槍を持っているようだな!」
ほうおうてんぶ?
……何故、ここで「風魔の小次郎」の聖剣が?