「………………………………」
「………………………………」
「何してるんだ、あれ」
「さあ?」
しとりとひとえはお互いの顔を見つめたまま動かず、まるで我慢比べをしているようにも見えます。......しかし、本当に不思議な年頃ですからね。
「ん、負けた」
「かった!」
しょんぼりとするしとりに嬉しそうに笑うひとえ。一体、何をしていたのでしょうか?と首を傾げながらも左之助さんの耳掻きを始める。
「じゃあ、横になってもらえますか?」
「おう」
ごろんと私のお腹に顔を押しつける左之助さんの頭を動かし、カリカリと左之助さんの耳の中を耳掻き棒で優しく削り、ちり紙の上にゴミを乗せていきます。
メルダース中尉と戦ったとき、受けた傷のせいで耳の中に血が溜まってしまったせいか。耳が聴こえにくくなってしまっている。
「ふう…」
「顔がすげえ近いな」
「え?えと、大丈夫ですか?」
「もっと近づいてもいいぞ」
そう言って笑う左之助さんに「耳に顔を近づけるんですか?」と聞けば「いや、それはオレがやる」と返された。どうやって自分の耳に顔を近づけるのだろう?
私の疑問に左之助さんは答えてくれませんでしたが、血の欠片は少しずつ取れています。耳を縫合するとき、まだ残っていたんですね。
それにしても、左之助さんは鳳凰天舞の力を受けて何ともないということはメルダース中尉と同じように左之助さんに鳳凰天舞の所有権はあるということです。
しかし、どうしましょうか。
「……取れました。今日はこれだけです」
「まだ行けたろ?」
「やり過ぎると危ないんですよ、もうっ」
「ハハハ、怒るなって、な?」
怒ってはいません。心配なんです。
「あの、左之助さん?」
「んー、なんだあ?」
「反対を向いて欲しいんですけど」
「…まだ大丈夫だろ」
何が大丈夫なんだろう?
「耳掻きは大事なことですよ」
「分かってるよ。オレはお前が外国の本を翻訳して描いてるのを知ってるからな」
「……でも、左之助さんはフランケンシュタインは好きじゃないですよね」
「現物見たらそうなるだろぉ?」
アレはどちらかと言えば「フランケンシュタイン博士のクリーチャーズ」ですね。博士の作った異形の怪物、その存在を恐れてしまった果てに、約束を違えることを選んでしまったわけです。
それは、とても悲しいことです。
「……ヒューリーはまだ戦ってるのかね」
「電気人間はこのご時世だと無敵ですから」
どこでも電力を再充電できるのです。
流石に、本家には届きませんけど。