斎藤一によって渡ってきた鳳凰天舞をしとりは三度目の受け取りを終えました。
煌びやかな剣柄の装飾。U字型の鍔とハバキの一体化した独特なガード部位、ポンメルという球状の柄頭、真っ黒な金属製の長方形の鞘、剣身はまだ見ていませんが、おそらく美しいのでしょうね。
「母様、ん!」
「二度目ですねぇ……」
しっかりと見るように差し出される鳳凰天舞。この直剣型の聖剣は「風魔の小次郎」に登場する神々の造り出した十本の聖剣の頂点に君臨し、残り九本の聖剣を支配できる極めて特異な聖剣です。
「剛刀・風林火山」のように使い手の精神に呼応し、その強さを成長させる聖剣でなければ打倒する事は出来ず、しとりの精神では鳳凰天舞を完全に操るのは難しく危険な目に遇わせてしまうかもしれない。
そう、不安を抱いてしまう。
「……形状はグラディウスに近しいですね」
スラリと鳳凰天舞を抜いて、曇り一つ無い剣身を見据える。メルダース中尉の性格を考えるに、沢山の人を斬ったであろう聖剣は美しさを損なわず、ただ、この場所に在り続けています。
「母様、この剣つよい?」
「えぇ、極めて強大です。しとりの持つ十本の妖刀を全て使ってもこの聖剣を破壊する事は不可能ですし、逆に妖刀達が壊れてしまいます」
「ん、それはやだ」
「フフ、大切に扱うのは良いことです」
鳳凰天舞を鞘に納めて、よしよしと頭を撫でる。
しかし、そうなると困りました。しとりの身体に封印の法式を刻みたくないです。モチモチでスベスベとしたしとりの柔肌に韻を刻むのは嫌です。
「しとり、籠手は好きですか?」
「籠手は昨日洗ったよ?」
「籠手の手の甲に韻を刻めば召喚できるようにすることも出来るんですけど」
「ん!それなら手のひらは?」
「うぅん、爪なら許可できるんですけど。身体に直接となると、とても危険なんです。鳳凰天舞は聖剣という性質上、妖気や瘴気を弾いてしまいますから、しとりの身体に納めた妖刀達の影響を受けますよ?」
「むう!」
ウンウンと唸る可愛い可愛い愛娘の事をお膝の上に乗せてあげ、もうすぐ十二歳になるしとりも花嫁修行の最中です。女学校に通ったものの、カリキュラムの殆んどを教えていたせいか。
通う意味はありませんでした。
「……では、こうしましょう」
白紙の紙を用意し、法式を刻む。
「ここに鳳凰天舞を」
封印しようとした瞬間、ボウッと炎が起こり、白紙の紙は消し炭になりました。
「おお」
「えぇ…」
リッチ思考の聖剣というのも考えものですね。