「ごめんなさい。動転してしまったわ」
「フフ、大丈夫ですよ」
冷静さを取り戻した陽炎の笑顔に安堵しながら私は視線を左之助さんに向けます。いきなり、襲い掛からなくて良かったでしょう?
しかし、本格的に「烈火の炎」に関わるとして、私の子供達は忍者と渡り合えるのでしょうかと悩む。魔導具。その性質は極めてシンプルな性能になります。
魔導具は強く、使い手を選ぶ。
「左之助さん、入って大丈夫ですよ」
「そうか?」
「……蛮竜、やはり貴女の傍に居るのね。戦骨」
「(戦骨は千年パズルの中ですねえ)」
そう思いながらも左之助さんに戦骨の事を重ねているのか。陽炎は静かに蛮竜に微笑んだ。戦国時代に生きていた彼女なら、戦骨に会っていたのも分かります。
ですが、少しだけおかしくもある。
そう、奈落です。
時間を越える術を知れば使おうとする筈、不老不死の肉体を得るためなら、人になることさえ厭わないであろう奈落が関わっていない。
「どの時代も糸色の人は優しいわ」
「ありがとうございます」
そう言って貰えるのは嬉しく思います。ただ、左之助さんがものすごく嫉妬しています。そういうところまた可愛いと思います。
いえ、男の人ならカッコいい?
───とは言えです。
危険な事は控えてほしい。
本心です。
「ん!母様、ただいま!」
「とーさま、どこぉ?」
トタトタと廊下を歩く音が聴こえ、話を続けようとしていた陽炎の姿は闇の中に沈んで消えてしまった。影法師、ひっそりと影に生きる。
「ん!いた!」
「おう。おかえり」
「お帰りなさい、しとり、ひとえ」
「ただいまー!」
二人に抱き着かれ、私は倒れる。
二人とも大きくなりました。もうお母さん一人では抱っこするのも難しいです。お膝に乗せるのはまだ出来そうですが、苦しそうです。
ですが、愛娘達のために母は頑張ります!
「また変なこと考えてねえか?」
「いえ、頑張ると決めただけです」
「そうなのか?」
そうなんですと言いながら、私は重く動かない身体で手を揺らし、左之助さんに抱き起こしてもらう。しとりもひとえも大きくなりました。
大きくなりすぎて、お母さんは上に乗られるともう動けなくなります。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ手加減してもらえると助かります。
しかし、大好きなのは事実です。
だから、せめて優しくしてください。
「かーさまにはやさしいよ?」
「ん、愛情過多」
「……どこで覚えるんだ、それ?」
「ん、母様の本!」
あ、最終的にそこに収まるんですね。