「…………」
「(何故、見つめて?)」
「…………」
「(なにかあるんですかね)」
「..........」
「左之助さん、どうかしましたか?」
「今日はサラシしてねえのか?」
「してますよ?」
ささっと胸を守るように両腕を上げ、左之助さんの言葉に困惑していると、左手を差し出してきた左之助さんに戸惑いつつ、彼の左手を握り締めます。
「?」
「……おかしいな。この本に書かれてる通りに、やってるんだがな」
「本ですか?」
不思議そうにする左之助さんの持っていた本を受け取り、「催眠術のやり方」という、あからさまに地雷っぽい本の内容にこめかみを押さえます。
どう見ても自費出版ですよこれ。
「左之助さん、催眠術は存在しますけど。そう簡単に出来るものではありませんよ?あと、どうして私に催眠術を掛けようとしたんですか?」
トントンと居間の机を指で叩き、左之助さんにゆっくりと訊ねます。
「最近、景は拒否するから意識だけ残して、ヤろうとしただけだが?」
「はっ、破廉恥です!?……っ、こほん、そういうのは悪いことだと思います。無理やりは悪いことです、分かりますよね?」
「分からん」
うっ、うぅ、手強い。
いえ、時代的に倫理観が違うのでしょうか?そういうことなら違うと教えないといけないんですけど。まさか催眠術なんてしようとするなんて予想外です。
しかし、どうしましょうか。
「えいっ」
パンと手を鳴らすと左之助さんが私を見ます。
「なんで拍手したんだ?」
「さっきまで催眠術を掛けていましたから、すぐに解いておこうと思っただけです」
「なに!?........どこも変わってないぞ?」
ベタベタと自分の身体を触って確かめる左之助さんに苦笑を浮かべつつ、「ふしだらな事をするわけないでしょう」と伝えます。
「なにされたんだ?」
「質問しただけです。フフ、わからないでしょう?」
にっこりと微笑みを向けると左之助さんは「次はお前に使えるように頑張る」と言われた。イタズラしようとしたのは左之助さんなのに、不思議ですね。
「手足を、いや、縛るか?」
この人は定期的に猟奇的な事を言います。実際、ありましたけど。あんなことはもう二度としません。女の子……ではないでふが、怖くてイヤでした。
「かーさま、おはなしおわったあ?」
「えぇ、終わりましたよ」
「絵本、よんで!」
「フフ、いいですよぉ」
絵本は私が描いているわけではありませんから、すごく安心してお話しできます。まあ、蒼い月の夜が訪れてしまったら、とても大変なことになりますけど。