ビュー・バンズとウィル・ジョンストン、そして幌馬車から蛮竜を担いで出てきた左之助さんが「ベラドンナ」に乗り込んだ瞬間、物凄い騒音と悲鳴が聴こえてくる。老若男女の声が入り雑じった悲鳴が続いていた最中、異様な身体の芯に響く発砲音がセントルイスに反響する。
「さっきの普通の銃の音じゃない」
左之助さんの傍に行きたいけれど。
ここにしとりを残して部屋を出るわけには行かず、私は窓の外を眺める事しか出来ない。その歯痒さと不安に俯いていたその時、窓枠に白い靴が乗る。
「糸色景、漸く相見えた様だね」
「ドクトル!?じゃあ、さっきの男の人が?」
「その質問にはYESと答えよう。そして、この
何人か候補が頭の中に浮かび、この西暦1880年に於ける最強の
「さて、映像を見ようか」
「……チャフで映像を?」
「正確にはチャフをあの
「いえ。助かります」
そう言って私は夜空に浮かぶ
『ウィリアム!ソイツらを殺せ!私の築き上げたベラドンナを潰そうとする奴らを撃て!撃ち殺せェ!!』
『マスター、あんまり叫ぶなっての。一応、僕の雇い主な訳だし、どっしりと構えててくれよ。全く、雇われの身にもなってほしいね』
悲鳴じみた叫びにボッタクリや嫌がらせをしなければ良かっただけなんじゃ?と思うけど。今更、そう言ったところで手遅れだろう。しかし、それよりも目の前に映っているウィリアムと呼ばれた青年の
こんなことがあり得るの?
『さて、と。じゃあ、決着を着けようか』
『良いぜ、此方も本気でやってやるよ』
左之助さんが蛮竜を担ぎ、一気に駆け出した瞬間、青年は左手を銃帯に納めていた回転式拳銃を引き抜き、高速の三連撃ちを放った。
しかし、青年の放った銃弾は蛮竜の肉厚な刀身に弾かれ、左手の二重の極みが青年の腹部に叩き込まれ、逃げ場を失った破壊のエネルギーは青年の身体を貫通し、その衝撃が背後の壁に打ち砕く。
「ドクトル、彼は実在の人間に生まれ変わったの?」
「その答えはNOだよ。神々の認識は少しズレているとはいえ他人の自我を消して魂を加えるという事は行わないと断言しておこう。───だが、四人目の転生者たる彼は君の辿り着いた答えに半分正解している」
私の辿り着いた答えは半分正解───つまり、左之助さんに殴られた彼はビリー・ザ・キッドという人間ではなく、その人間に似て生まれた転生者ということになるわけね。
『ウィリアムが、ビリー・ザ・キッドが田舎者の日本人に負けたァ……!!?』
『……イテテ。マスター、何度も言ってるけど、僕はビリー・ザ・キッドじゃなくて、ごくごく普通の何処にでも居るウィリアム・ヘンリーだよ、マッカーティでもジュニアでもなくね。まあ、それも蝶々のおじさんしか信じてくれないけど』
蝶々のおじさんって……。
ここにいるドクトル・バタフライのことかしら?と窓枠に腰かけていた彼は「二重の極みを受けて立つとは、やはり肉体レベルは最上級の資質を秘めている。実にExcellentな事だ」と嬉しそうに笑う。
【概要用語解説】
本作の単語や転生者に関する事を解説します。
【ドクトル・バタフライ】
偽名「蝶野爆爵」。
年齢は四十代前半(推定)。身長185cm。
「武装錬金」に登場する蝶野家の祖先の一人として生誕した転生者。蝶野家を大商家へと築き上げ、錬金術の書物を収集し、来るべき日のために「ヴィクター・パワード」に接触し、彼の協力者、そして永久的に生きるホムンクルスとなる。
常に余裕と優雅さ、気品を感じる蝶・
転生する際に選んだ「特典」は「物語の統一された世界」と「知性」。
一つ目の特典「物語の統一された世界」はドクトル・バタフライの憧れた武装錬金に関わり、関連した物語の全てを統合し、同一世界とした舞台である。しかし、「特典」は彼に付与する物であり、彼は無限に拡がり続ける世界を永久的に知覚化してしまう。
二つ目の特典「知性」は彼の求める分野や知識を瞬時に理解し、常時最先端の技術を身体に最適化して、ずっとアップデートし続けるというもの。