「糸色、何をしている?」
「斎藤さん?あ、こんにちは」
「嗚呼」
「こんにちは、です」
「……こんにちは」
「はいっ。こんにちは!」
ちゃんと挨拶するのは大事な事です。
チラリと足元を見ると煙草を吸っていたらしく、踏んで揉み消した吸い殻が落ちています。私に会うときはいつも消してくれますね。
「それで、何をしていた?」
「お参りです」
そう言って私は古びたお堂の脇に出来た小さいお墓に手を合わせる。北海道で会って以降、こうして定期的にやって来ているのですけど。
やっぱり、鵜堂刃衛は怖いです。
ですが、お墓を掃除し、供養を続ければ彼の怨念も消えると私は考えています。鵜堂刃衛は黒笠として、暗殺を繰り返していたけれど。
ヒトとして生きる事は出来た筈なんです。
「あの阿呆の墓か」
静かに手を合わせる斎藤一。
私に出来ることは、こういうことだけです。
少しずつ、本当にちょっとずつです。
「先ず、言っておくが一人で出歩くな。この阿呆が、そんなのだから、相楽が俺にあんなふざけた相談をしてくるようになるのだ」
「ふざけた、ですか?」
「お前の手足を切り落として服のように身に付けて、何処にも行かないようにしたい。そう言われた俺の気持ちがお前に分かるか?」
「夫の猟奇的な心情に戸惑いますね」
う、うそですよね?
服のように身に付けていたいって、流石にそんなに恐ろしい事を左之助さんが言うはずがありません。きっと、ただの聞き間違いです。
私が、玩具のように……。
「……なぜ、喜ぶ?」
「へうっ!?な、なにがですか?」
「お前達は良く分からんな…」
うぅ、喜んでなんていません。
そのような不埒で破廉恥な事を想像するなんて絶対にあり得ないこと、というほどでもありませんけど。やっぱり怖いものは怖いものです。
そう思いながらも左之助さんになら、と考えてしまう自分の浅ましさに恥ずかしくなります。いえ、愛してもえるのは悪いことでは……?
「景!……なんで斎藤といる?」
「俺は巡回の途中だ。阿呆共が」
「? なんだったんだ」
「えと、その、あはは」
ふと、立ち去ろうとしていた斎藤一が足を止めて、此方に振り返ると。
「お前の戯言を伝えておいてやったぞ。お前になら何されても構わんそうだ」
そ、そんなこと言ってませんよ!?と斎藤一に言おうと立ち上がるも目の前に左之助さんが立っていて、私の肩を触ると、背中、腰、お尻へと手のひらが這う。
「マジで手足いいんだな?」
「よ、よくありませんよ!?」
し、死んでしまいます!