「王手」
「……参りました」
「緋村さん、読みが悪くなりましたか?」
「おろぉ…昔ほど冴えてはいないでござるが」
縁側に座して、将棋を打つ。
うむむと唸る緋村剣心を目の前に見据えつつ、私はほうじ茶を入れた湯呑みを口許に運び、串に刺さったお団子を食べます。みたらし団子、大好きです。
しかし、桂馬を使えば勝てたのに緋村剣心は無理に飛車で攻めてきましたけど。飛車に何かしら拘りでもあったんでしょうか。
「…糸色殿は本当に餅が好きでござるな」
「ん、らいふきです。……大好きですよ、お餅はお腹に溜まりやすいですし、小さく切って、少しずつ食べても良いですし、それに子供の頃はずっと部屋で寝てばかりでしたからね」
そう言うと申し訳なさそうに「おろぉ…」と鳴く緋村剣心にクスリと笑い、みたらし団子のお皿をそちらに近付けます。
「忝ない。……ん、お店のものでは?」
「フフ、左之助さんが突いてくれたお餅です」
「なんと」
餅米はトンは残っていますから……その、食べても脳の栄養に使われて太れず、健康を維持しようとしたら倒れるという悪循環─────。
とても困ってしまいます。
「糸色殿は本当に左之が大好きでござるな」
「はい。大好きな夫です」
「うむ、良いことでござる」
「緋村さんも薫さんが大好きですよね」
「そうでござるよぉ」
お互いにクスクスと笑っていると顔を赤らめた薫さんと、苦笑いをしている左之助さんが障子を開け、何かを言おうています。
「景、やっぱり」
「はい?」
「くっ」
「?」
「左之も大変でござるなあ」
「焚き付けたのは剣心よ」
「おろぉ」
なんだか大変そうですね。
まあ、私は見守りましょう。
「ところで、いつ剣心と仲良くなったんだ?」
「仲良くなったんですか?」
「仲良くなったのでは?」
将棋を打つと仲良くなる。
成る程、明治時代の神秘ですね。
「拙者もそろそろ糸色殿を警戒するのはやめようと思っただけでござるよ。些か妖しいと思い込みすぎていたでござる」
「そうだな。怪しみ過ぎだ」
「そうね。あれはだめだと思うわ」
まさかの総攻撃にビックリです。しかし、それだけ心配して貰えていたと考えらと、とても幸せな気持ちになります。
やっぱり、とても幸せです。
お団子、美味しいです。
「景さん、食べるときは幸せそうよね」
「料理が好きだからな。ただ、自分で食べるとなると明らかに子供より量が減る」
「しかし、あの細い身体に積めているだけ、頑張っているのではござらんか?」
みんな、なんの話を?