緋村剣心と将棋を打つ。
何度か繰り返して分かったことですけど。緋村剣心、ものすごく負けず嫌いです。私に負けた程度で、ものすごく対抗心を燃やしています。
そんなものを抱かなくても良いのに、すごく不思議に思いながら左之助さんに相手を代わって貰い、私の薬箱に仕舞っていた処方薬を取り出して、粉末状の薬を口の中に流し込み、白湯で飲み干す。
良薬は口に苦し。
しかし、本当に苦すぎます。
こんなに苦いと飲みにくいです。
「左之、その手は」
「景と打ってるときに覚えた」
「(現代の将棋を覚えた明治時代の人間。将棋の世界に攻め込めば無敵ですね)」
ぼんやりとゲーム関連の強者を思い出す。
しかし、実際に考えると難しいことです。「武藤遊戯」のように古代のファラオを宿しているのならば、可能性はあり得るのでしょうけれど。
「糸色殿の手札は、ここで」
「そこならこうだな」
「ムッ、待ったでござる」
「ヘヘッ。どうした?」
「……ここでござる」
「チッ」
何やら白熱していますね。
仲良しなのは良いことです。
しかし、ここまで私の名前ばかり出るのは些か恥ずかしく思いつつ、師範としての仕事を終えて帰ってきた薫さんは将棋を打つ二人に溜め息を吐く。
久し振りの休日ですからね。
まあ、緋村剣心は師範として役立っているわけではありませんし。飛天御剣流を誰かに教えるというつもりもないようです。
もっとも比古清十郎は嬉々として、剣路君に教えていますし。しとりも見稽古を経て、飛天御剣流の流儀を深く知り始めています。
正直、かなり危うい。
まだ、剣の強さに固執していないけれど。もしも聖剣を巡る戦いに巻き込まれたら、とてもじゃないですが、私は手助けする事は出来ません。
それほどまでに剣の道は奥深い。
ただ、棒を振るう。
それでは、剣術ではありません。
剣術は、斬る事に「理」を加える。
どう斬る、どう防ぐ。
どうやって、斬り合える。
その果てを見ようとしたのなら、しとりはもう人の道を踏み外した事になります。しとりは、健康な身体に生まれた鑢七実と似たようなものです。
人としての限界値は存在しない。鍛えれば鍛えるほど彼女は強さを増してしまう。幸い、筋力関連は私に似ていて、怪力ではありません。
剣術の腕前は、姿お兄様を越える。
超神速の先、光速の世界に踏み込めるススハムに着いていける様になったら、きっとしとりに勝てる人はいなくなってしまう。
それは、とても寂しく悲しいことです。
あの子が一人になるのはイヤです。