「糸色さん、お久しぶりですねえ」
「お久しぶりです。雅桐さん」
日本帝国雅桐銀行。
前世の記憶と少し違う人の創立した日本銀行の応接室。珍しく妖しさを感じない雅桐輪具の挨拶を受けているものの、やっぱり左之助さんは警戒しています。
「私を呼んだ理由を窺っても?」
「電報で伝えたとおり。私の銀行に怪しい物を残して行った客がいるんですよ。どうにも貴女の描いている『烈火の炎』という絵草紙にそっくりな品物だったので来ていただいた次第です」
そう言うと雅桐輪具は木箱に納めた魔導具であろう代物を差し出して来ました。襷を取り出して、袖を縛って和紙を口に咥える。
「(……これは、神慮伸刀?)」
トンファー型の刀剣魔導具。能力は「伸縮」。間合いを測り、戦闘する近距離の相手にとって、間合いの見えない相手は脅威です。
ゆっくりと日本刀と同じ柄巻を掴み、三日月状の刀身を見つめる。此方の魔導具はおそらく柏崎さんなら使いこなせるでしょうね。
「どうです?」
「拝見しました。此方は本物です」
「おお!!では、売るとした場合の相場は!?」
「……そうですね。魔導具は、いわゆる特注品です。同じものは一つとして存在しないですし、最低金額は五万、最高は百万と考えて良いです」
「百万…、まじかよ」
「左之助さんの蛮竜なら億は行きますよ」
「ま、マジか」
ウソは言っていません。
ただ、問題はあります。
「雅桐……いえ、武田さん、売るのなら相手の事を見定めて下さい。もしかしたら、あなたの子孫に多大な損害を与える可能性も有り得ます」
ハッキリと言えるなら「森」の姓を持つ人間に渡して欲しくない。ですが、武田さんは絶対にお金に目が眩み、売ってしまいそうなんですよね。
「……森の人間ですね」
「! 流石ですね、もう把握しているんですか」
「えぇ、私の銀行に圧力を掛けようとしていますが、糸色家と相楽商会、志葉家の支援を受けている、この最強の起業家たる雅桐輪具に手出しは出来ません!」
「お前も支援してたのか?」
「はい。武田さんはお友達ですし、昔は無理やり手篭めにされそうにもなりましたけど」
「してませんが!?」
「でも、『ぐへへ。お前はもうオレのものだー』って四乃森さん達に言ったんですよね?」
「言ってませんが!?」
えと、じゃあ、彼らのあれは冗談だったんですか?と聞けば「私は、女性に無理やり迫るなどしませんよ」と言われ、紳士を装っているので確かにと納得し、「勘違いしていました。ごめんなさい」と謝罪します。