雅桐輪具の譲り受けた魔導具「神慮伸刀」は高額売買せず、会長室に飾っているそうです。定期的に手入れを繰り返して、最高品質を維持している。
もっとも食器と違ってただ磨けば良いだけではなく、専用の手入れ道具が必要です。日によっては刀身の手入れに使う油を変えないといけません。
拘りの強そうな武田さんなら問題ないでしょうけれど。左之助さんは蛮竜の推定金額を聞いて、「お前、そんなに高いのか」と大広間の蛮竜に呟いていました。
「左之助さん、商会の総資産もありますよ」
「……賭場に行きてえな」
「ダメですよ、もうっ」
私の言葉に「ダメか?今なら負けなしだぞ?」と言ってくる左之助さん。それは負けなしではなく、負けても勝っても意味の無い賭け事です。
「そもそもです。賭け事は悪いことです……確かに、ストレスの発散にはなるかもしれませんが、もっと健全的なストレスの発散をですね」
「じゃあ、ヤらせろ」
「……えあ?」
こんこんと説明していた筈なのに、気が付いたら押し倒されていた事実に困惑しながら、私は左之助さんの事を見上げ、だんだんと状況を理解し始める。
お、おとこの人は、いつもそうですねっ。
「ひっ、や、やだ」
「いつもしてるだろ?」
「ま、毎日はしてませんっ」
すりすりと太股を撫でる手に身体を強張らせ、こんなお昼時にこんなことをするなんて破廉恥です!と訴えるものの。左之助さんは破廉恥です!
「あッ、んッッ…!」
首筋を噛まれ、身体が跳ねる。
「ん!ただいま!」
「たあだいまー!」
しとりの元気な声とひとえの間延びした声が聞こえ、ほうっと安堵する私の唇が塞がれ、二秒、五秒、時間が長く感じてしまう。
「……っ、左之助さんは意地悪です」
「嫌いか?」
「嫌いでは、ないです、けど」
そういうのはダメだと思います。
「? 母様お昼寝してるの?」
「そ、そうなるのでしょうか?」
「まあ、寝ると言えば寝るな」
ペチペチと左之助さんの頭を叩いて、そういうことを子供に言わないで下さいと注意しつつ、着物の乱れを直して、しとりとひとえの事を抱き締めます。
おかえりのハグです。
お母さんは娘達の成長に追い付けなくて悲しいです。まだまだ熟年夫婦にはほどとおく、どうすればお父様やこ母様のような夫婦になれるのでしょうか。
やはり、ここは左之助さんにオチャラケた感じになってもらうのが、ベストなんだろうけど。そうすると、左之助さんがまた倒錯してしまいそうです。
そうなった左之助さんも見てみたいですけど。