あからさまに間者が増えましたね。
「(私の死亡を言い触らしている人がいますね。流石にまだ死ぬような体調ではありませんよ)」
確かに吐血しますし、身体も痩せてますけど。まだ左之助さんやしとり、ひとえに気付かれていない。それなのに、人が盗みに来るというのは変です。
身内の犯行ではなく、盗み聞きしていた人間が曖昧な情報を噂話として流して、その情報を確かめるためにやって来たと考えるべきですね。
「景さんが死んだって本当!?」
「生きてますよ、薫さん」
慌ただしく我が家の庭先に入ってきた薫さんにそう言いながら瓦版を受け取ります。月岡津南の文字を真似ていますが、インクの香りが違いますね。
しかし、匂いでは追えませんね。
「生きてるわね」
「いふぁいれふよ、…んッ…」
顔を捏ねるように触られ、眼鏡がずれる。
レンズに指紋が付いたら取りにくいので、あまり眼鏡に触らないでほしいんですけど。いえ、そもそも眼鏡に触るのは止めてほしいです。
「ん!ん!ん!ん!」
「しとりちゃん、どうしたの?」
「わたしもなでて!」
「ひーはかーさまあー」
「あらあら」
「フフ、お昼のお勉強は終わりましたか?」
「「………………」」
終わってないんですね。
もっとも、二人の事ですから休憩を終えれば、またお勉強に戻るでしょう。それまで、ゆっくりと娘達と触れ合える時間を楽しみましょう。
「かーさま、なでなで上手だねー」
「お母さんですからねえ」
よしよしとひとえの頭を優しく撫でている隣で、薫さんに頬っぺたをモチモチして貰っているしとりはとても嬉しそうに笑っています。
やっぱり、私の娘は可愛いです。
しかし、写真に残せない。
ドクトル・バタフライに頼み、新しくカメラを作って貰えるように言ってみましょうか。そうしておけば、しとりとひとえの可愛すぎる姿を残せます。
ああ、しかし、明治時代に高性能カメラなんて作ってしまったら怪しまれてしまいますし。いっそのこと安心安全の射影機を作ってもらいましょうか?
そんなものを作ってしまったら、余計に怪しまれてしまいそうですけれど。愛娘達の写真を残しておきたいと思うのは母親として当然だと思うんです。
「かーさま?」
「フフ、なんですかあ?」
「お顔、赤いよ?」
「……なぜでしょうか?」
ひとえに言われて自分の顔を触ってみるものの、あまり変わったことはありません。どうしたら、良いのかと首を傾げながらもひとえの事を抱き締めたり、よしよしと沢山撫でてあげます。