「オイ、糸色」
「Goodイブニング。糸色君」
斎藤一とドクトル・バタフライという最悪の組み合わせを見つつ、私はほうじ茶を一口ほど口に含み、コクリと喉を潤し、湯呑みを机に置き、座布団を拾って、ゆっくりと自分の顔を隠します。
「私は座布団です」
「阿呆が」
「糸色君、ジョークは下手だね」
「ひぃんっ」
座布団を奪われ、斎藤一に睨まれ、泣きそうになりながら後ろに下がるもチャフに掴まり、動けないように小さな檻になってしまいました。
な、なんで、ここまでするんですか?
いつもは普通に話し合いで終わるのにっ。
「だ、出して下さい!」
「落ち着きなさい。糸色君」
「糸色、お前の偽物が出始めた」
「……はい?」
偽物が出始めた。
私に偽物なんて居るんですか?と戸惑いつつ、先日の一色景の事を思い出す。ですが、あれは熱狂的な愛読者だっただけですし。
いえ、それはそれとして檻はイヤです。
「うぅ、檻はイヤです」
「フム。確かに狭いそうだね、すまない」
「出すな。蝶野、お前は糸色を甘やかし過ぎている。少し抑えることを覚えておけ」
「斎藤君、彼女を見たまえ。檻に入れたら死にかけの子兎だろう」
「アイツは蛇だ。隙を見せれば喰われるぞ」
いったい、斎藤一には私はどのように見えているのでしょうか?と困惑しながら、自分の身体を触って蛇っぽいかと悩んでしまいます。
私のどこが蛇なのでしょう?
「あの、蛇の要素は?」
「眼だ。獲物を狙う眼が似ている」
初めて言われましたね、そんなこと。
「えと、私の偽物とは?」
「お前の名前を騙って悪さしている」
左之助さんじゃないんですから、私の知名度なんてそんなにありませんよ。いえ、あるのなら聞いておいたほうが良いんでしょうか、それとも?
「ん!母様、小さな部屋にいる!」
「しとり、助けてくださいっ」
「ん!斬る!」
「えっ、きゃあああっ!?」
チャフの防壁を容易く斬り伏せてしまったしとりに思わず、ビックリして悲鳴を上げてしまう。よわよわなお母さんなので突風だけで死にそうです……。
「九頭龍閃か、いつ覚えた?」
「ん!はじめちゃんもできるの?」
「俺は使えん」
「そーなんだ」
腰が、抜けて立てません。
しとりの剣捌きは今の段階で緋村剣心に迫りつつあります。このまま育っていけば全盛期を越えて、更に強くなってしまいますね。
「母様、大丈夫?」
「えぇ、ありがとうございます」
「竹刀で掻き消されるとは、ウゥム」
「ばっちゃん、チョウチョ切ってごめんなさい」
「ああ、いや、Ladyの謝ることではないさ」