「左之助さん、此方は?」
「お前を守る部屋だ」
どう見ても座敷牢に見えるのですが、いつの間に地下室を作っていたのかを聞きたいのですけれど。ものすごく爽やかな笑みを浮かべて居ます。
「あの、この縄は?」
「お前を守る道具だ」
「その、この枷は?」
「お前を守る道具だ」
「えと、この壁は?」
「お前を守る道具だ」
どこを聞いても守る道具としか答えない左之助さんに不安になりながら、一歩後ろに下がった瞬間、肩を捕まれて、僅かに目の色の変わった左之助さんが居ました。
邪心に取り憑かれそうになってますね。
私の事を見下ろす左之助さんの顔に手を伸ばして、両頬を挟むように掴み、背伸びしながら口付けを交わす。邪心を打ち払えるのなら、感情は愛情や友情、性情など善に傾倒するものが好ましいです。
「っ、はあ……目は覚めましたか?」
「覚めた」
「フフ、なら良かったです♪︎」
ぼんやりとする左之助さんの手を引いて、座敷牢の出来た地下室を出て、居間に戻って左之助さんと一緒にお茶を飲み、のんびりと過ごします。
「……オレ、なんであんなの作ったんだ?」
「奈落に邪心を憑かれたからですね」
「は?」
「左之助さん、妖怪に取り憑かれるのは二回目ですけど。今回でハッキリと確定しました。左之助さんは霊媒体質になっています」
まあ、私と過ごしているせいでしょうけど。
しとりとひとえも妖怪やアヤカシを惹き付ける体質ですし、どうしても性質は変化してしまいます。特に、その、交わったりなどしてしまうと、ですね。
霊気は循環するわけです。
仙道仙術の類いになりますが、昔は霊能大家として強い霊能者を作ろうとしていた折り、そういう能力も加わり、身体が自然とそういう感じになっていたというわけです。
しとりとひとえの強さの秘密でもありますね。まあ、それを差し引いても左之助さんは、この世で最も強靭な肉体を持っているわけですけど。
「左之助さん、落ち着きましたか?」
「……とりあえず、奈落を見つけたら殴る」
いつも通りということですね。
「彼」の身体を乗っ取っている奈落を倒すことが出来れば直ぐにでも倒せるのですが、やはり奈落を倒すために必要な武器は揃っていません。
いえ、そもそも揃わないのです。
犬夜叉と日暮かごめは居ません。
奈落を倒せても、四魂の玉を倒すことは難しい。しとりなら正解を引き当てることは出来るでしょうが、私は不正解を選んでしまう。
「景、団子持ってくるか?」
「じゃあ、お茶を入れ直しておきますね」
「おう」