「左之助さん左之助さん」
「なんだ?」
「私の部屋に何か居ます」
「ねずみか?」
「いえ、もっと、大きな気が」
私の言葉に首を傾げる左之助さんは新聞を畳んで丸め、棒を作ると書斎の方に付いてきてくれます。ただ、部屋の中で倒そうとしないでくださいね。
ちょっとだけ不安になりながらも襖を開け、書斎に入る。静かなのに何かが動いている気配に左之助さんも警戒し、本棚の近くや天井を調べていく。
「……なにもいないぞ?」
「え?でも」
そんなはずが、と言葉を続けようとしたとき、私は部屋の中を覗き込んでいる男の子───に化けた妖怪を見つけてしまった。
恐ろしく極めて危険な妖怪です。
「おとうさん、開けてよ」
「は?誰だお前」
「ヤトノカミです。おそらく私の身体に収めた『地獄の鍵』の気配と……(私の身体に
「ヤト、なんだって?」
「自称神様気取りの妖怪です」
そう言うと窓の向こう側に立つ男の子は顔を怒りに歪め、そっと私は視線から逃げるために左之助さんの背中に隠れます。
今のは失言でしたね、すみません。
「景、アイツは倒せるのか?」
「……この身と引き換えなら」
「やめろ」
ッ、そうですね。
自分で言いましたけど。絶対にしません。
この家に入ることは出来ないと気づいたヤトノカミは消えて、部屋に満ちていた不穏な気配も無くなる。やはり、危険すぎる妖怪は苦手です。
「で、どうするんだ?」
「どう、しましょう?」
少なくともヤトノカミは鬼太郎が倒してくれます。幸い、ヤトノカミはプライドは高く、他の妖怪に頼ることはありませんし。
相応の準備さえしておけば、問題ないと思います。それでも気になるのは妖怪の長を何人も知っているせいか。やっぱり妖怪は怖いですね。
「しかし、顔が悪いぞ景」
「......ワルグチ、ですか?」
「ワルグチではない」
確かに、左之助さんが私にワルグチを言うわけがありませんね。────やっぱり、なにか気になることがありますね。
「景、考え事か?」
「考え事です」
どうやって、あの結界を通ってきたのかと考えながら、しとりとひとえの事を思い出す。そこに割り込もうとするヤトノカミの意識は切り離しています。
左之助さんは蛮竜の結界があるため、そもそも入り込むことは難しい。そのはずなのに、私の血筋の影響でよく取り憑かれています。
アレはもうダメだって分かります。
奈落はいつも悪さばかりです。
そろそろ諦めてほしい。