近頃の東京は物騒です。
邪悪な妖怪は跋扈していますし、妖怪の他にも幽霊が居たりします。妖怪や幽霊の多さは年々増していますが、私は無関係な筈です。
確かに『地獄の鍵』は持っていますが、そちらを使った事は一度もありません。ですが、その妖気に反応しているのなら危険すぎる。
「ひとえ、迂回しましょうか」
「うかいー?」
「えぇ、そうです」
「あい!」
ものすごい異様な量の集まった幽霊達に気付かれないように移動し、溜め息をこぼす。ひとえにお買い物の荷物を手伝って貰ったおかげで安全に動けます。
ただ、惹き付ける体質が二人も揃うと、やっぱりとても大変です。左之助さんとしとりも心配しているでしょうし、早く帰らないとです。
───とは言え、です。
あからさまに増える幽霊。先日のヤトノカミの事を考えるとまだまだ居そうです。そうなると、まだ子供のひとえに襲い掛かるかも知れません。
それだけは避けたい。
「かーさま、ゆうれい!」
「いますけど、いませんよ」
そう言ってひとえの近くに立っていた幽霊を見ると、幽霊は守りの懐剣によって吹き飛んでしまった。守ることに全力を出す霊剣、すごい威力です。
私は妖怪じゃないので問題ありませんが、もしも妖怪だったら消し飛ばされていますね。
「ひとえは危ないことしちゃダメですよ?」
「あい!」
私の言葉に元気に答えるひとえ。元気なのは素敵なことですけど。やっぱり、怪我をしたらと想像するだけで不安になってしまう。
「ん!母様とひーちゃん!」
「ねーさま!!」
「お疲れ様です、左之助さん」
「おう。景もお疲れさん」
私の持っていたお弁当を受け取ってくれた左之助さんとしとりに着いていくひとえを追いかけ、私は食事を始める二人の事を見つめる。
「(交易上、色々と面倒臭い事はあります。が、なぜこんなにも左之助さんは幽霊にまとわり憑かれているのに平気なのでしょうか?)」
カッコいいし、強いし、優しいから取り憑かれてしまうのは仕方ないと割り切ることにしましたけど。奈落に邪心を憑かれてから日に日に増しています。
やっぱり、何か隠していますよね。
「......なんだ、これ?」
「梅干しを刻んで混ぜたおむすびです」
「美味いな……」
「フフ、ありがとうございます」
梅を練るように刻み、雑穀米と玄米と白米を混ぜご飯、鶏肉は茹でて蒸したものを解し、軽く醤油やみりん、砂糖の合わせタレを掛けてお米に混ぜています。
野菜は柴漬け、小松菜と削り節の胡麻和えを曲げわっぱに入れています。美味しく出来ていたので、喜んで貰えるのは嬉しいです。