最近、わざと私の名前を出していますね。
熱狂的な愛読者達のおかげで私の悪口は鎮圧され、気がつけば犯人達も警察署の前に転んでいたり、暴行された痕があるそうですけど。
私の何を狙っているんでしょうね。
「しとり、何をしているんですか?」
「ん!......さかなさん?」
悩んで魚を指差すしとり。
しかし、そこに居るのは魚ではなく妖怪の魚です。ひとえもご飯をあげていますし、怖いもの知らずの娘達の胆力に感心し、少し目眩を起こします。
二人とも本当に元気です。
ただ、やっぱりお母さんとしては結界の中に妖怪を連れ込み、飼育しようとするのはやめてほしいです。空飛ぶ魚って普通に怖い。
「......ひとえ?」
「あい!」
「そちらは?」
「んとね、えとね、ギョー!」
ぎょー、と、呼ばれた二足歩行の魚はひとえに呼ばれるがまま現れて、とても大きく青色の身体に鱗の生えた姿は紛れもなく魚の怪人でした。
二人とも惹き付ける強さが増しすぎです。
元気に走り回る幼児を追う魚。とても怖くて恐ろしい光景の筈なのに、ひとえもしとりも楽しく遊んでいるので気にはしませんけれど。
あからさまに、私の事を怪しんでいますね。
いえ、分かっていましたけど。
「なんだこれ?」
「左之助さん、お帰りなさい」
「あ、ああ、帰ってきたけどよ」
「しとりとひとえの遊び相手です」
私は生態系に詳しくなったつもりはありませんが、我が家の生け簀は変わりましたね。折神や妖怪の遊び場と化したそこに手出しは無理です。
「お前ら、なんだ?」
「ギョー!」
「ぎょー!」
叫ぶ魚、真似るひとえ。
左之助さんも大抵の事には慣れてきましたが、こういうものは初めてですよね。分かります、私の与えたモヂカラを制御する本と筆の練習の副産物です。
「ギョー!」
「喧しい!」
「ギョー!!?」
二重の極みを受けた魚は倒れ、墨に戻り、プクーッ!と頬っぺたを膨らませたひとえは筆と本を取り出して、素早く絵を書き記す。
「とーさまのばかー!」
「なんでカマキリが!?」
バキで見た光景ですね。
等身大のカマキリと戦い始める左之助さん。私の傍にやって来たひとえを優しく抱き締めて、折角のお友達をいきなり倒されて悲しい彼女の頭を優しく撫でてあげ、グスグスと泣くひとえを支える。
「ごめんなさいねえ、ひとえ」
「んー、とーさまばかっ」
「お話を聞いてほしかったのよね」
「そーなのっ」
ムウッとするひとえは怒っているというより、悲しくて抱き付いてきています。とても優しい女の子ですから、愛情も深いのです。