私の役目は終わっていると信じていたのですが、ドクトル・バタフライはそう思っていないようです。ススハムもまだ助かると信じていますし。
しとりは十三歳の誕生日を迎えました。
あと二年、頑張って生きようと思います。
「ゴールデンカムイ」まで長く遠い時間ですが、少しでも生きて家族と幸せに過ごしたい。
「(あと一年も生きれるか分かりませんが)」
「カッケマッ、手が止まってるわよ」
「あ、すみません」
手元にある魚の皮を用いて作るアイヌ民族の衣装作りを手伝う手を動かす。裏面の肉や脂を削いでいき、鞣して乾かす準備を進めます。
北海道の気候だと腐る心配は少なく空気も乾燥していますから、こうして自由に鞣しも出来るのですが、ススハムは東京に来ているんですよね。
「……貴女、また無茶したそうね」
「したのは左之助さんです」
どちらかと言えば妖刀達の大反撃によって我が家の天井や倉は半壊したわけですし、ひみつ道具「巻きもどし光線」のおかげで無事に終わりました。
まあ、奈落は二度も大反撃を受ける結果になってしまったわけですが、その事実に左之助さんはとても満足していたのに私に酷いことをしましたね。
「ススハムさん、どうですか?」
「なにが?」
「ウイルク達は来ましたか?」
「まだ来ていないわね。けど、長谷川写真館は燃えていたから既に始まっているわよ」
「そう、ですか」
「貴女が気負う必要はないわ」
そう言ってくれるけど。
知っているのに、何もしなかったという重さは残ってしまう。助けたいと願うばかりで動けもしない癖に、なにを言っているんでしょうね。
私に出来ることなんてあるのでしょうか。
「ネガティブになるのは良いけど。アタシは落ち込んだりしないわよ、因果律とかそういうのもどうだっていい。アタシは他人より目の前に居る、親友を選ぶ」
「……フフ、ありがとうございます」
「笑うんじゃないわよ」
でも、嬉しかったんです。
不器用でも、ちゃんと慰めようとしてくれて、ほんとうにありがとうございます。けど、やっぱり悲しみは無くなりません。
ただ、それでも私は生きています。
「......まあ、いいわ。相楽カッケマッ、貴女に聞きたいんだけど。女の子に贈るものって、いったい何が良いのかしら?」
「そう、ですね。髪飾りなどでしょうか?ススハムさんは綺麗な黒髪をしていますし、きっと貴女の娘も綺麗な黒髪になりますよ」
「髪飾り、ね」
私の言葉に頷くススハム。
ですが、赤ちゃんですから遊び道具ですね。