戌亥番神の果たし状を受け、左之助さんは蛮竜を担いで向かって行きました。切り火をして何事もなく帰ってきてくれることを願うばかりです。
しとりの剣道の稽古にひとえは着いていき、静かな時間を過ごしています。ごろつき長屋にいた時を思い出す、とても静かな時間です。
「今日は、いい天気ですね」
縁側に座布団を持っていき、急須と湯呑みを運び、生け簀に射し込む木漏れを見つめる。穏やかな一日です、左之助さんが無事に帰ってきますように。
しとりとひとえが怪我しませんように。
そう何度も願うばかりです。
「……命尽き、散る花びらの、涙かな」
イマイチの出来ですね。
俳句は風情を大事にする以上、やはり私のように小難しく何事も悪い方に考えすぎるタイプには合いません。素敵な言葉を言えると良いんですけど。
命尽きる、花の色褪せて、静かに舞う。
「私は死んでも命は紡いでいけますね」
こうして、のんびりと過ごすのも乙なものです。
「穏やかに眠りたいなあ」
ドクトル・バタフライの作ってくれたお薬を口に含み、コクリとほうじ茶で流し込む。粉末タイプのお薬はどうしても飲みにくくて大変です。
しとりとひとえのお薬は「お医者さんカバン」のおかげでジュースやゼリー状のものになっていますが、美味しいからと言ってお薬の二杯目をもっととおねだりするのはダメです。
しっかりと決めた時間に飲みましょう。
「…苦い」
良薬は口に苦し。
苦すぎるのも難点ですね。
私がほうじ茶を飲む理由もリラックス効果や血行促進など効能を期待してのことです。ただ、飲み過ぎると危ないので一日に二杯程度ですね。
それ以外は、基本的に白湯です。
サンピタラカムイ様の神酒をお湯に数滴ほど加えたりもしています。下手に多く飲んでしまうと倒れてしまいますし、私は甘え上戸だそうです。
アレは酔っているだけなので、私自身の抑圧された感情ではありません。あんな破廉恥な事を酔ってお願いするのは私ではないはずです。*1
「......今日は、本当に良い天気です」
目を閉じて、縁側の柱に身体を預ける。
今日だけは少し、お昼寝をしましょう。
うつらうつらと睡魔に誘われ、目を閉じる。
コトンと湯呑みを縁側に置いて、お薬の影響で眠り始める身体の力を緩める。今日は、ゆっくりと出来る日です。少し、少しだけ眠ってしまいましょう。
「おやすみなさい」
そう言って私は意識を手放す。