帰ってきた左之助さんに泣かれました。
なぜ?と困惑しながらも話を聞けば穏やかな表情で柱に寄りかかり、湯呑みも倒れているのに直さず、動かない私に焦っていたそうです。
薫さんや恵さん、燕さんにも怒られるという事態に未だに私は困惑しています。まさかお昼寝しているときに死んだと思われるのは流石に予想外でした。
今後はもうちょっとだけ気を付けましょう。
しかし、どうしましょう。
私は悪いことしていないはずなんですけど。左之助さんに関しては私の眠っている姿を四千七百八十一日(十三年と少し)も見ていると思うのですが?
「私はまだ死んでいませんよ、ほら」
ポンポンと軽く自分の足を叩いて見せると、みんなは安堵してくれますけど。やっぱり心配してくれているのか、それとも信用されていないのか。
ベタベタと触られます。
「あの、顔を触るのは分かりますけど。胸やお尻を触るのはどうしてなんですか?」
「いや、形良いから」
「そうね」
「(……もしかして、喧嘩を売られてる?)」
私より背も高くてスタイルの良い恵さんと薫さんを見上げ、ペタペタと自分の胸を触っていると視線が逸れることに気づきました。
ひどいです。
左之助さんに顔を向けると物凄く手を握り締めて、すごく怖いことになっていました。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いッ、い、いえ、落ち着きましょう。アレは、ただ、嫉妬しているだけです。
嫉妬で、あの顔は不味いのでは?
「お前ら、ちょっと帰ってくれ」
「まだお説教……いや、帰るわ。薫さんも帰るわよ」
「え、えぇ、行きましょう、燕ちゃん」
「えっ、えと、はい……」
「しとりちゃんとひとえちゃんはお泊まりさせるわね。景さん」
ひぃんっ。見捨てられた……!
みんなに手を伸ばすも左之助さんに掴まれ、満面の笑みで私を見つめる。
「ひっ」
「座敷牢と倉の地下室、どっちがいい?」
「ど、どっちも、やです」
「じゃあ、座敷牢な」
「い、イヤだって言っていいましたよ?」
軽々と私を持ち上げた左之助さんは居間を抜け、廊下を歩いて突き当たりの壁を押すと隠し階段が現れる。また増えていませんか?
そんなことを思いながら、階段を降る左之助さんに身体を寄せ、落ちないように抱き付き、暗がりに恐れて、目を閉じる。
「枷とか縄とか色々用意したからな」
「っ、と、倒錯的…」
ひぃんっと泣きそうになる。
いえ、もう半分くらい怖くて泣いています。
「三日は覚悟しろよ、景」
「し、死んでしまいますぅ…!」