二十九歳の人妻です。
状態は瀕死。普通に不調です。
「景、顔色が悪いぞ」
「左之助さんのせいです」
ぐったりとする私の腰を撫でて労っているつもりの左之助さんにそう伝えると不思議そうにしていました。あなたがしちゃいけない顔です。
私の身体を労るならもう止めましょう。
「左之助さん、もう身体が持たないのでやめてもらえるとたすかるんですけど」
「最後はお前の方が離さなかったろ?」
それとこれは別問題だと思います…!
私の身体は弱いのにエッチなんてしていたら心臓が持たないという話をしているんです。いえ、確かに四回ほど死にかけているわけですけど。
......まあ、そういうわけです。
エッチはもうお断りです。
「ダメだ。オレが祝言を挙げるときに『遊廓には行かねえし、花街にも行かねえ』って約束したときにお前はなんて言った?」
「(その約束は覚えていますけど。まさか左之助さんまで覚えているなんて予想外です。それに、さすがに身体が持ちませんし)わ、忘れましたね…」
「『左之助さんのお願いは何でも聞きます』だろ」
「っ、ち、違います!私は『はい。出来るだけ御応えします。でも、あまり酷いことはしないでくださいね。私は、まだ十五歳ですので』と言った、んで、す……」
「馬脚が出てきたな?」
そう言うと左之助さんは腰を撫でる手を止め、内帯を掴むので抵抗するも私の抵抗なんてものは蟻が恐竜に挑んでいるようなものです。
大して、意味を成しません。
「ひぃんっ」
「脱げ。噛み傷つけてやる」
「やですっ、いつも首ばっかり噛まれて、血が出てるんですよ?!」
「じゃあ、手首噛むか?」
「噛まないでくださいっ」
「無理だ。お前は自分が誰の女なのかを十四年も一緒にいるのに全く分かりもしてねえ」
それはもう理不尽すぎる言葉です。
「左之助さんは破廉恥ですっ」
「お前もだぞ」
むしろ体力を温存しないといけないのに襲われて、ぐったりしている私のどこが悪いと言うのですか。すべて左之助さんが破廉恥で助兵衛すぎるせいですっ。
怖いのはいやです。
「景、こっち向いてくれよ」
「やです」
「なんでだ?」
「着物を脱がそうとするからですよ」
「いまさらだろ」
「今更ではありませんよっ」
私の言葉に困惑する左之助さんの手をペチペチと叩いて、しっかりと反省して貰います。あなたのそういうところは、とてもダメだと思います。
確かに、確かにです。私が遊廓や花街に行ってほしくないとは言いましたけど。あんなにも激しく……コホン、そういうのは苦しいのです。