私の診察を始めたドクトル・バタフライに従って、着物を脱いで襦袢だけになった私を見つめる左之助さんの視線の圧力に頬を引き釣らせ、苦笑を浮かべます。
見詰めすぎて、穴が開きそうです。
「オレも医学を習うか」
「高年齢の新人医者はお断りだね」
「オレが診るのは景だけだ」
「それは、ダメなのでは?」
診察台に寝そべって、素肌を晒すお腹に手を翳して、自分の手の甲をトントンと指先で叩いて打診を行うドクトル・バタフライ。こういう診察時は真面目なんですよね。
「臓器の健康状態は心臓と肺を除けば問題ない。が、ここ二ヶ月か三ヶ月の性交の頻度を考えるに、左之助君はかなり糸色君に無茶な要求をしているね」
「ちょ、直球ですね……いえ、こほん、それは私が原因なのもあるんです」
「ムッ?」
ドクトル・バタフライの言葉を肯定しつつ、左之助さんが私に無理強いしているという誤解を否定し、私のお願いでもあることを伝えます。
珍しいものを見るように見ますね。
いえ、自分でも分かっています。
「私、そろそろ死にますし、せめて左之助さんに覚えていて貰えるように、恥ずかしいですけど。その、褥にお誘いをしているんです」
「可愛いだろ。オレの女房」
「負担を掛けすぎだ。バーバリアン」
「誰がババアだ」
バーバリアンは野蛮人のことですね。
しかし、その意味を教えずに私は苦笑を浮かべつつ、襟元を正して襦袢の留め紐を結び、脱いでいた着物を身に付け、内帯を巻いて、着物を固定し、その上に帯を巻いて、話し合う二人を見遣る。
「景は治るって言ったろうが!?」
「延命処置だと言った筈だ。糸色君の心臓と肺は現代医学では到底治せる病気ではない。況してや手術しようにも身体が移植を受け付けない上、今の衰弱した彼女では手術に耐えられるのかも怪しいのだ」
その言葉に私は俯く。
知っていましたけど。
ハッキリと、そう言われるのはやはり辛くて悲しいです。私なりに頑張って生きようとしていますが、核鉄も生命の水もホムンクルスの幼体も、その何もかも私には使えません。
私の内側に眠る者が拒絶し、次の転生を待ち望んでいるのかも知れませんね。
「えと、どうしましょうか?」
「糸色君、ここはもうアレしかない」
「あれ?」
「うむ、信二君に聞いたのだがかの時代ではアバンギャルドな性癖が沢山存在していたそうだね。なんだったか、まあ、エッチは程々にしたまえよ」
「は?毎日するに決まってんだろ」
左之助さん、そういうことじゃないですっ。