「............なんだ、どうした?」
「ジョリジョリ」
「ん!じょりり!」
ジョリジョリとした左之助さんのお髭を撫でるしとりとひとえに混ざりたい気持ちを押さえながら、私はお湯に浸していた手拭いを絞り、水気を切った物を左之助さんの顔に優しく掛け、小柄を研いで、鞣して、汚れを拭き取って、お湯に浸し、水気を拭き取る。
髭剃り用の泡を仕立て、顔に塗る。
「では、剃りますね」
「おう」
ゆっくりと頬を這うように髭を剃り、丁寧に優しく剃っていると姉妹のやってみたいという熱意ある視線を受けますが、これはお母さんの特許です。
しとりとひとえはまだダメです。
左側の頬を剃り終えて、右側の頬、上唇の上、下唇の下、顎先から顎の下まで丁寧に剃っていく。
個人的にはお髭は大好きなんですけど。清潔感を感じないと仕事に不満を持たれてしまいますから、こうして定期的に剃っているのです。
「ひーもやりたい!」
「わたしもやりたいっ」
「フフ、これは私の特許です。しとりとひとえも大人になって素敵な旦那様が出来たら、こうしてお髭を剃ってあげましょうね」
私の言葉に頷くしとりとひとえの姉妹と違って、左之助さんは物凄くイヤそうにしています。あと一年と数ヶ月でしとりは十五歳になりますし。
そろそろ許してあげましょう、ね?
「だんなさまー?」
「ん!けんちゃん、お髭生えてない!」
「(ナチュラルに剣路君と一緒になることを言っているしとりは可愛いです。ソーキュートです。幼馴染みで夫婦になる、何だか少女漫画みたいですね)」
ちょっとだけ、しとりと剣路君の半生を描いてみたいという気持ちになりました。どんなものが良いのかと考えながら、お髭を剃り終えた顔の泡を拭き取って、素肌が腫れたり爛れたりしないようにお薬を塗ります。
「ひーもぬってあげる!」
「ぶっ、顔がベタベタになってねえか?」
「なってますねえ」
「ん!父様、すごくベタベタになってる!」
私達の言葉に左之助さんは苦笑いを浮かべ、私の持っていた手拭いで自分の顔を乱雑に拭いて、ひとえの手を拭くと抱き上げ、ワシャワシャと頭を撫で回してしまいました。
「んゃー!!」
「ああ、綺麗に整えていたのに」
「もー!とーさまのいじわる!!」
「ん!次、わたしの番ね!」
「しとりもですか?」
「おっしゃ!」
ワシャワシャとしとりの頭も撫で回していく左之助さんに苦笑を浮かべつつ、私は道具を丁寧に掃除して片付ける準備を進めていきます。
道具は整理整頓清潔にです。