「ひぎっ、いぎぃ…いだい!いだいです!」
「塗り薬を塗るのも一苦労ね」
「うぅ、すみません」
私は畚褌だけを身につけたうつ伏せの格好で、腰から尾てい骨の辺りまで念入りに塗り込まれる軟膏に涙を流し、枕を抱き締めて痛みを堪える。
「色白すぎるわよ、お外でなさい」
「こ、これでも出ているんですよ?」
「景さんの外出はいつも決死だったわね」
それは、そうですけれど。
別に死にかけているというわけではないと信じて貰えると、その、助かります。
「入っていいかー?」
「良いわけないでしょう。まだ施術中よ」
ガチャガチャとドアノブを捻る左之助さんに生物的危機を感じつつ、ドアの向こう側にいるという現状に安堵の吐息をこぼす。
「にしても細いわね。体重は?」
「九貫*1…ちょっとです」
「33キロって、痩せすぎじゃないのっ!?」
「ひぐぅっ!?」
腰を押されて悲鳴を上げるとドアノブを動かす速度が増し、恵さんの怒声も響き、着替える間もなく腰を固定する腰帯を巻いて貰います。
「肌艶は良いのよね、病的に白いのに」
「えと、あ、あはは…」
身体は健康的に見せ掛けているだけで、お医者さんに見られたら直ぐに分かるほど弱っています。それでも恵さんは口には出さず、施術してくれます。
その心遣いに有り難さと申し訳なさを感じます。
しかし、腰を押すのはやめてください。
「恵、もういいよな?」
「ダメよ。まだサラシを巻いていないわ」
「じゃあ、入れろよ!?」
「なんでですか」
「平坦より、ましね」
「……泣きますよ?」
「あら、失礼」
クスクスと笑う恵さんの胸と自分の胸を見比べ、深くて重苦しい溜め息をこぼす。せめて、もうちょっとだけ二回の出産を経験し、そこそこ、ほんのちょっと、ちょっぴりだけ大きくなっているんですけど。
────次の瞬間、バギャッとドアが壊れた。
「へ?」
「ちょっと!?」
「…縛り方が悪くねえか?」
「み、みないでぇ…」
胸を隠すように、畚褌だけの身体を隠すように、ベッドの上で丸まり、腰の痛みに顔を歪めながらも羞恥心に苛まれ、泣きそうになります。
こんな明るいときに見てほしくありません。
顔を赤く染めながら襦袢を手繰り寄せて、こんなにガリガリに痩せてしまった身体を直視して欲しくないという気持ちが溢れてしまう。
「っ、艶かしいな」
「左之助、貴方ねぇ……はあ、屏風みたいにそれをドア代わりにするから立て掛けなさい。景さんも泣かずに着替え……るのは腰が痛くて無理なのね」
うぅ、ごめんなさい。