左之助さんの傍にいると死ぬ可能性もあるということで私は病院の個室に眠っています。ぎっくり腰のためうつ伏せのまま眠っています。
「(娘達に会いたいです、寂しいです)」
動けない身体で寝返りを打った瞬間、小さく苦悶の悲鳴を上げ、泣きそうになりながら、身体を横向きに変えて一息吐いて、窓の外を見上げます。
「よう」
「ひっ」
のっそりと窓の外に現れた人影にまた小さく悲鳴を上げるものの、左之助さんだと気付いて安堵します。よ、良かった、妖怪じゃないんですね。
「寂しいと思って会いに来たぜ」
「……鍵は閉めておいた筈なんですけど」
「昼間に外したに決まってるだろ?」
左之助さんは、そういう人ですよね。いえ、悪いとは言いませんけど。靴を脱いで部屋に入ってきた左之助さんは動けない私に近づくと頬を撫でてきました。
「ん…」
「痛かったか?」
「いえ、ちょっと驚いてしまっただけです」
「そうか」
眼鏡には触らずに顔を撫でてくれる左之助さんの手のくすぐったさに目を細めつつ、目線を会わせるようにしゃがんだ彼の顔がよく見える。
力強さはあるけれど。
不安の色の混ざった目。ぎっくり腰だけなのに、私が死ぬかも知れないという不安に苛まれているのでしょうかと申し訳なく思います。
「左之助さん、手を握ってくれますか?」
「ああ、それくらい構わないぞ」
「フフ、ありがとうございます」
「ところで、その、左之助さん」
「なんだ?」
「寝返りをしたいので手伝って貰えますか?」
「そんだけか?」
そう言いながら私が、痛くないように優しく抱き上げ、ゆっくりと仰向けにしてくれた左之助さんにお礼を伝えて、彼の手を離す。
名残惜しいですけど。
今はもうお休みです。
「オレも一緒に寝ていいか?」
「だめです、左之助さんは破廉恥さんなので動けない私に酷いことをするでしょう?」
私の一言を否定しない左之助さんに「ちゃんと子供の事を考えて、後妻を迎えるなり、してくださいね?」と告げたら、首筋に噛みつかれました。
「いぎっ、な、なんで?」
「お前がまたふざけたこと言うからだ」
そんなこと言いましたか?と聞こうにも私に覆い被さるように病院のベッドに乗り込んできた左之助さんを見上げ、ほんのちょっと、少しだけドキドキします。
「いたっ…うぅ…」
「悪い、大丈夫か?」
「腰が、痛いです」
慌てて降りる左之助さんにショック……こほん、残念に思いながらも私は元気になってほしいと言ってくれる左之助さんの手を握り、眼鏡を外して眠ります。
少し照れ臭いですね。