ぎっくり腰、三日目。
普段なら朝食の準備を済ませて、お洗濯と掃除、原稿に続きを描いている時間です。恵さんが許してくれれば仕事は、少し下品でだらしないですけど。
寝転んだまま描けます。
「(……すごく、暇です)」
白紙の本を手に取って「前世の記憶の保持」による五万八千二百二十七冊の料理の指南書やレシピを読み、ぎっくり腰が治ったらフレンチを作るのも視野に入れ、しとりとひとえにも作り方を教えてあげようと考える。
しかし、二人とも小さいですし。
いきなり料理の作り方を教えようとするのは危険だと判断してしまう。あと一年と数ヶ月しか生きられない癖に、いつもいつも心配して後手に回って、ずっとああしておけばこうしておけばと女々しいです。
「(私はいつも悩んでばかり……)」
左之助さんと夫婦になると決めたときのように自分の意思を出せるようにならないといけません。それなのに、どうしても悩んでしまう。
「Goodモーニング、糸色君」
「ドクトル、お帰りは彼方ですよ」
すうっと窓を指差す。
悲観しているときは一人が良いです。
「君の入院の話を聞いてね。核鉄の山を持ってきたのだが、メディカルポッドのほうが良かったかね?」
「また、大変な物を作りましたね。ミクロサイズのナノ治癒剤を明治時代に製作して、何をするつもりなんです。パワードさん達に使うつもりですか?」
「後者二つの問い掛けはNOだ。前者の答えは君の描いたノートを読んで作ったものだね」
私の「黒歴史ノート」をいつ読んだのだろうと怪しみつつ、流石に「ドラゴンボール」と繋がることは避けることに成功し、安堵します。
しかし、悩むことに代わりありません。
「……赤座伴之進」
「だれだね?」
「新撰組の隊士です。以前、この世界はスーパー戦隊と繋がっていると話しましたよね」
「うむ、話したね」
「宇宙人、普通に来ますよ。昭和辺りで」
地底人や異世界、果てには地獄や天国からも来るわけです。私の死後でも続いていく世界において、一番厄介なのは「月光条例」と「海賊戦隊ゴーカイジャー」の二つの「物語」だと思います。
「左之助さん、どうしてましたか?」
「斎藤君と緋村君の二人に取り押さえられ、仕事場に放り込まれていたが?」
「そ、そうですか。しとりとひとえはご飯をしっかりと食べていましたか?」
「食べていたね。しかし、作り置きを一週間分作るのはどうかと思うよ?」
「こういうときのためです」
正直に言うと一週間では足りませんね。