「景、開けろ」
「動けないので無理です」
「壊したら怒られるんだよ」
「鍵は恵さんが持っていますから」
「うるさいわよ、左之助!」
そんなことをドア越しに話しながら、私は恵さんに整体を行って貰っています。腰の関節に多大な負荷を負っていたため、こうなったという説明を受けます。
「もっと詳しく調べるためにウソも偽りもなく答えなさい。景さん、日に何度していたのかしら?」
「い、一日に……十、いえ、十五ぐらい?」
ポソポソと、そう伝える。
「そりゃあぎっくり腰にもなるわよ!!断りなさい!ただでさえ小柄なのにあんな喧嘩馬鹿の相手を毎日してたら身体が弱るに決まっているでしょう!!」
恵さんの言葉にドアの向こう側にいた左之助さんの気配は少しだけ弱まったように感じるものの、ガチャガチャとドアノブを捻っているままです。
そして、最近羞恥心を煽られています。
とても、恥ずかしい……!
顔を赤く染めながら腰の関節をゆっくりと動かしていく。今日も畚褌だけになっているので、恵さんには身体を詳しく見られている気がする。
「大分、良くなってきているけど。呼吸器官が少し傷付いているかもしれないわ。飲み薬を出しておくから、忘れずに飲みなさい」
「苦いものですか?」
「抹茶より苦いわね」
「……苦いんですか」
ゴリゴリと目の前で擂り鉢で粉末に変わる漢方薬を見つめ、急須の笊に流し込まれ、お湯に効能が浸るのを待ちながら着替えを手伝って貰います。
「景さん、貴女が怒るのも叱るのも苦手なのは知っているけど。頻度を考えなさい、普通なら離縁してもおかしくない回数よ」
「離縁なんてしねえよ」
「あんたは黙ってなさい」
恵さんに怒られているのに今日もガチャガチャとドアノブを捻っている左之助さんに苦笑を浮かべ、私はサラシを巻かずに病院着に着替える。
「大丈夫?苦しくないかしら」
「大丈夫です、けど、生地が薄くて少し」
「まあ、そうなるわよね。けどね。景さん、のほほんとしているのに素肌を見せないし、派手な着物より地味な着物を選ぶから未亡人って言われるのよ」
「(どちらかと言えば残るのは左之助さんなんですが……なんて言ってしまったら怒るんでしょうね。いえ、私の不手際なのは分かっていますし、それは仕方ないことだと思います)」
しかし、下手したら透けてしまうかも知れない病院着に身を包んで左之助さんに会うのは、とても怖くて恥ずかしく感じます。
その、カーディガンか羽織を貸してもらえると、とても嬉しいのですけど。