某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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黒笠事件 序

あの日、比留間兄弟の横槍によって中断された緋村剣心と左之助さんの喧嘩は一先ず終わりを迎えたけれど。いつ二度目の死闘を始めるのかと不安は募る一方だ。

 

「うめえな」

 

「フフン。そうでしょう!」

 

「嬢ちゃんの頑張りもそうだが。糸色の教え方が上手いのもある。特に、この焼き魚の焦げ具合も良い感じに飯が欲しくなるぜ」

 

そう、私の不安は募る一方の筈なのにだ。

 

何故か私と左之助さんは先日喧嘩していた神谷活心流の道場にやって来て、神谷さんの振る舞う朝御飯をご馳走になっているのだ。

 

原作では美味しくないや不味いなど文句を言われていた彼女の料理も改善点や献立表を作り、その手順を間違えなければ美味しいモノを作ることは出来る。

 

「斬左、薫殿の料理は美味しいでござるよ。これもまた偏に薫殿の努力した結果、糸色殿の助力もあれど。人の努力は良いものでござる」

 

「剣心…!」

 

「前まで丸焦げだったけどな」

 

「ちょっと弥彦、流石に私も魚を丸焦げになんてしたことないわよ!?」

 

ワイワイと神谷さん達の賑やかな朝御飯の光景を眺めつつ、私は左之助さんが骨ごと魚を齧り、飲み込んだ瞬間に湯呑みを手渡す。たまに左之助さんも喉に骨が刺さるから気をつけてほしいのよね。

 

「……やっぱりコレなの?」

 

「はしたないから親指は止めなさいって」

 

あの河原の時と同じように頬を赤らめて聞いてきた神谷さんの手をペチンと叩き、女の子がやっちゃいけないことだと叱りつけていたそのときだった。

 

「お取り込み中、申し訳ありません。緋村さんは御在宅でしょうか?」

 

「おろ?」

 

「しょ、署長さん!」

 

神谷さんは突然の訪問に慌ててピコピコしていた親指を引っ込める。最初から止めておけば良かったのに、と。私は溜め息を吐きつつ、余っていた湯呑みにお茶を注ぎ、署長さんに差し出す。

 

「嗚呼、これはご丁寧に」

 

一口お茶を啜った彼は咳払いし、真剣な面持ちで話し始めた内容に背筋が凍りつく。遂に、緋村剣心を人斬りに戻しかけた「黒笠事件」が始まるのだ。

 

次々と語られる殺人鬼「黒笠」の話に神谷さんは冷や汗を流し、緋村剣心と左之助さんは人斬りを楽しんでいるという言葉に顔を僅かに歪める。

 

「ちょっと待てよ、まさか此処を訪ねてきた理由ってのはその黒笠退治を人斬りを止めたヤツに『もう一度人斬り抜刀斎になれ』って、コイツに頼みに来たってえのか?」

 

そして、すぐに左之助さんの怒気の籠った声が室内に響き渡る。彼は単純な喧嘩は好きだけれど、必要不必要関係なく殺しを嫌う左之助さんには不快な話なのは事実だろう。

 

「いいえ、あくまで捕縛を依頼に来ました。今は誰もが平和に生きる明治時代、もし黒笠の凶行が民間人に伸びてしまえば恐ろしいことになります。どうか!今一度私達に力をお貸しください、緋村さん!」

 

そう訴える署長さんは土下座しようとするも直ぐに動きが止まる。緋村剣心が土下座しようとした彼の肩を掴んで止め、真剣な眼差しを向け───。

 

「そのご依頼、確かに承ったでござる」

 

緋村剣心は、にこやかに微笑んで依頼を受けた。

 

 

 

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