私に未練を与えようとしている。
そう気付いたのは先日の事です。
左之助さんの褥を求める言葉や仕草、行動は私に生きたいという未練を与えて、活力を与えようとしてくれているのです。
嬉しく思う反面、やはり執着心を感じる。
昔の彼は自由気ままに生きていた喧嘩屋。私が彼を縛ってしまっている事実は消えません。私も彼もお互いを縛り合っている間柄です。
「その気になれば左之助さんは大奥だって作れそうなのに残念です」
「とんでもねえこと言うな」
「でも、事実ですよ?」
私の返答に眉間を揉んで悩む左之助さん。自分のルックスと大人の色香を出していることに全く興味を示していないのはアレです。
ダメだと思います。
女学校に通ううら若き乙女は若手のイケているおじ様にメロメロになっているんです。つまり、妾や側室、後妻を狙っている人は多いわけです。
出来れば、しとりとひとえを本当の娘のように可愛がってくれる女性が好ましく思いますが、左之助さんにも好みはあります。
私に似ていたら、嬉しいですね。
そんなことを考えながらも左之助さんを見遣る。ものすごく不服で不満で不本意すぎるという顔をこちらに向け、訴え掛けています。
「お前、反故するきか?」
「……すみません。もう、お婆ちゃんまで一緒にいるというのは、無理だともう私自身で分かっているんです。だから、申し訳ありません」
「許さねえよ。景の魂を縛り付けてでもオレの傍にいて貰うからな」
私の肩を掴んで抱き寄せる左之助さんに「あまり強欲すぎると地獄に堕ちちゃいますよ?」と告げると「お前も引きずり落とす」と言われました。
それは、どうなんでしょうね。
私の苦笑に気付いていない左之助さんの背中に手を回して、ポンポンと優しく背中を撫でてあげる。私の役目は終わりますが、しとりやひとえ、その子供から、子供達に役目は移っていきます。
糸色景の物語はおしまい。
無理に引き伸ばし、蛇足を続けるのはダメです。
「景、清国には死んだヤツを甦らせる術があるらしいな。グイフンだかキョンシーだかって」
「どちらも破廉恥です!」
私を奴隷にするの?と聞けば、ものすごく葛藤する左之助さんにちょっとだけ引く。自分の妻を奴隷にして、いったいなにをするつもりなんです?
流石に、そこまでの外道なのなら私はもう貴方に言えることはなくなってしまいますよ?という眼差しを向けると、左之助さんは動かなくなりました。
「景、景、景、景、景」
「はい」
「キョンシーの作りか」
「教えません」
倫理に反する行為は致しません。