ズンズンとカウンターまでやって来た甲冑男爵は札束を置き、お酒やコーヒーではなく普通のミルクを頼んだ。まあ、栄養価は高いし、エネルギー摂取量も申し分ない。それにこの猛暑の中、甲冑を纏う彼にとって最適の飲み物なのは事実だ。
「斯様な場所に子連れのMrsが……オイ。貴様、何のつもりだ?」
「テメェこそ何のつもりだ。オレの女房と娘に気安く触んじゃねえ」
「……今年の参加者は子連れもいるのか」
そう言って酒場を出ようとした甲冑男爵が私に視線を向けた瞬間、さっきの心配するような視線とは違う。まるで漸く探し物を見つけたような視線に変わる。
「Mrs…お名前を聞いても?」
「えっ。相楽です、相楽景」
「成る程、貴女が蝶の友人か」
その言葉に全てを察してしまった私はウィリアム・ヘンリーに視線を向けると「ま、そうなるよね」とヘラヘラ笑いながら親指を掲げるようにサムズアップしてきた。
ドクトル・バタフライ、彼は私をどうしたいのだろうか。いったい、どういう立場の人間にしようとしているのかと考えていると左之助さんの『悪一文字』の背中が私の視界を覆う。
「蝶野の知り合いかも知れねえがオレの女房に変なちょっかいをかけるのは止めな」
「うむ。確かに円満の夫妻に余計な事を告げるのは紳士にあるまじき行為だった。非礼を詫びよう。そして、三日後に会おう……若き強者よ」
そう言うと今度こそ甲冑男爵は酒場を退出し、トリモチまみれのアウトローは邪魔なのでマスターの采配で保安官に押し付けるかは決めてもらうことにした。
この「GUN BLAZE WEST」を目指す切っ掛けはドクトル・バタフライの渡してきたサイン・トゥ・ウエストと左之助さんが興味を持ったからだ。
私は付き添いの家族のはずなのに、どうして「コイツは『GUN BLAZE WEST』の秘密を知っているんだ」という感じの視線を受けないといけないのだろう。
「おばっ…ッッ!??」
私の事をおばちゃんと呼ぼうとしたビュー・バンズの脳天に三人の拳骨が落とされ、見事に気絶してしまった。まあ、彼は誰よりも「GUN BLAZE WEST」を夢見て、友達との約束を果たそうとしている。
「景、またか?」
「えっ?!ち、違います!ヘンリー君からも弁明してもらえると思います!」
ズイズイと怖い顔で近付いてくる左之助さんの圧にビックリしながら、しとりを抱っこしたまま後退りし、ウィリアム・ヘンリーの名前を出して標的を変えようと試みるものの。「いや、僕は知らないね」と押し返された。
「ウィル、他の奴らは任せる」
「ああ、分かった。でもその手段通じるのか?」
「隠し事出来ない様に躾けるだけだ」
とんでもないことを子供に言わないでと文句を言いそうになるけど。しとりは寝てないから大丈夫だろうと私は左之助さんに担がれて行く。
そろそろ「武装錬金」を投稿する予定です。