何度も負けた安居院さんは半泣きのまま「このままで終わったと思わないことですわね!」と文句を言いつつ、帝国ホテルへと帰ってしまった。
しとりとひとえは満足そうです。
紫煌剣と鳳凰天舞。
そして、黄金剣。
私の周りに三本の聖剣が集まりましたけど。特段、変わった事も起きていません。強いて言えば消えてしまった「御伽噺」を書き直していることですね。
「(このままだと消滅した御伽噺の『サクシャ』は私だった事になってしまいます。……ですが、それでもみんなが幸せになれるのなら私は嬉しい)」
「ん!母様、どうしたの?」
「フフ、なんでもありませんよ。しとりは安居院さんと試合をして楽しかったですか?」
「楽しかった?」
「ひーは楽しかった!」
悩むしとりと、笑うひとえ。
対照的な姉妹の態度にクスクスと笑いながら、二人と一緒に居間でお茶を飲み、羊羮を食べていたとき、視線を感じ、縁側を見ると左之助さんがいた。
「オレが倉で整理してるときに楽しそうだな」
「…倉って、地下室ですよね」
「地下室!わたしも見たい!」
「見せても良いのか。あれ?」
「変な物はないですし、倉の地下室なので倉庫であることは変わりませんね。まあ、鎖や枷なんて物を置いている倉は早々ありませんけど」
「なんか不満でもあるのかよ」
不満はありませんけど。
不平はあります。私ばかりがいつも左之助さんに破廉恥な事をされている気がしますし、もうちょっとくらい羞じらいを持ってほしい。
いえ、傲慢な考え方ですね。
「ちかー!」
「ひーちゃん、走っちゃダメだよ!」
「しとりもひとえも元気で可愛いですね」
「あれは一言で済ませるのか」
「可愛いですよ?」
確かに変に暴れているようにも見えますが、あれは地下室という未知の領域に入ることの出来る事実にワクワクしているだけですし。
楽しくて仕方ないのでしょうね。
「かーさま、こんなのあった!」
「……何故、あんなに大きな鉈が?」
「なんでだろうな」
「ん!わたしも見つけた!」
「…………左之助さん、あの焼き鏝は」
「なんでだろうな」
この人は、私に何をするつもりなのでしょうか?と困惑と恐怖を抱きつつ、しとりとひとえに危ないものは直ぐに置くように伝える。
そういうものは隠して下さい。
「使わないでほしいです」
「使わねえよ」
「……フフ、そうですよね」「今はな」
思わず、左之助さんを見上げる。
鉈は薪割りで使うかも知れませんが、あの焼き鏝に意味があるんですか?と問い……怖くて聞けません。も、もしも、あれを受けたら……?
ふつうにすごく怖いです。