最近、更に可愛くなってきたしとりに恋慕を向ける男の子が増えてきて剣路君はすごく焦っているそうですが、左之助さんも金槌や釘を持っていました。
「門下生を襲うのはダメですよ?」
「襲わねえよ。ちょっと釘指すだけだ」
「比喩じゃないですよね、その装備」
分類的に五寸釘という長い釘を持った左之助さんに苦笑を浮かべ、しとりを見るも未だに男の子に近寄られ、話し掛けられる意味に気付いていない。
しとりは鈍感系主人公というわけではないのでしょうが、この子は自分に向く好意に無頓着すぎる。いえ、私や左之助さんが目一杯に可愛がった影響で、自分に対する好意のハードルが足首以下になっている。
そういう可能性もあるわけです。
「……、あの?なんで私の手を握るんですか?」
「いや、釘並みに細いからよ」
「そうですか?」
「器用そうな手だな」
指を絡めて、手を握ると「手は小さいのにな」と呟かれ、どう言葉を返すのが正解なのかを悩みつつ、左之助さんを見上げる。
「私の指が気になるんですか?」
「いやな、もしもお前の身体が丈夫だったらしとりやひとえより強かったかも知れねえと考えるとな」
「フフ、なんですかそれ。私は弱くても強くても変わりませんよ、ずうっと貴方のお側にいます。めった好きですよ、左之助さん」
「オレも好きだぜ、景」
クスクスと笑いながら手を握り、笑っていると廊下から部屋を覗き込んでいるしとりとひとえに気付き、ビクリと肩をはね上げ、顔を赤く染める。
見て、しまいましたね。
「仲良しだね」
「なかよし!」
二人の言葉に苦笑を浮かべてしまうものの。左之助さんと私が仲良しというのは事実です。ただ、ちょっぴり破廉恥でエッチすぎるのは苦手ですけど。
───とは言えです。
ここ最近の左之助さんはスキンシップが激しすぎて、私も戸惑っています。怖いもの見たさ。そういう感覚で近づいたら、大変なことになりそうです。
「ところで、しとりは何を持っているんです?」
「ん、池ちゃんにお菓子もらった」
「池波君のお子さんにですか?」
「二世代に渡ってオレの女と子供を狙うか」
左之助さんの小言に「池波君とは、ただの幼馴染みですよ」と言ったら「しとりの鈍さはお前譲りだな」と言われ、私は鋭い方だと思います。
いえ、薄々分かってはいるんです。
私が鈍いというのは分かっているんです。
確かに私は恋愛弱者、それこそ左之助さんにプロポーズされるまで全くあなた様の好意には気付いていませんでしたけど。それでも努力しているんです。